2026年8月の東京都賃貸オフィス市場は、平均坪単価が24,664円、空室率は2.9%となり、前月比でそれぞれ1.7%の上昇、0.1ポイントの低下と、堅調な推移を示しました。過去6ヶ月の推移を見ても、坪単価は着実に上昇傾向にあり、市場全体が緩やかながらも回復基調にあることを裏付けています。
特筆すべきは、新築ビルにおける空室率の顕著な上昇です。平均空室率は2.9%で横ばいですが、新築ビルに限ると29.6%と前月比で0.9ポイントも上昇しました。特に大規模新築ビルでは28.7%と、さらに状況は深刻です。これは、7月に千代田区で大型新築ビル「HIBIYA CROSS PARK サウスタワー」が募集を開始したことや、大崎・北品川エリアでの新規供給が影響していると見られます。こうした新規供給の増加は、市場全体の空室率を押し上げる要因となっています。
一方、既存ビル市場は安定した動きを見せています。既存ビル全体の空室率は2.2%で、前月比0.1ポイントの低下。既存大規模ビルも2.0%と、同様に0.1ポイント低下しています。これは、新規供給の影響を受けにくい既存物件への需要が根強く、テナントニーズが満たされていることを示唆しています。
区別の状況を見ると、明暗が分かれています。坪単価では、渋谷区が28,355円/坪でトップを維持し、港区、中央区がそれに続きます。これらのエリアは、依然として高い賃料水準を保っており、都心部のブランド力と利便性が評価されていることが伺えます。特に千代田区では、坪単価が前月比4.6%と大きく上昇し、25,976円/坪に達しました。これは、前述の「HIBIYA CROSS PARK サウスタワー」の募集開始に伴う賃料水準の上昇や、既存物件の需要が堅調に推移していることが背景にあると考えられます。
空室率の改善という点では、江東区が前月比0.3ポイント低下の3.6%、台東区が0.2ポイント低下の2.3%、港区が0.2ポイント低下の2.1%と、それぞれ着実に空室を解消しています。こうした中、品川区では前月比0.4ポイント上昇の4.7%と、空室率が悪化する動きが見られました。これは、7月のニュースでも言及された大崎・北品川エリアでの全館募集開始による影響が、一時的に空室率を押し上げた可能性が考えられます。
坪数帯別に見ると、賃料水準には依然として大きな開きがあります。200坪超の区画では平均33,722円/坪と最も高額である一方、20〜30坪の小規模区画は20,988円/坪にとどまり、その差は約12,700円/坪に達します。これは、大規模ビルにおける高稼働や、都心5区の大規模オフィスビル空室率が1%台を維持している状況とも連動しており、大型物件への集約や、より付加価値の高い物件への需要が賃料を押し上げている構造を示しています。
最近のニュース動向からは、都心5区の中小規模オフィス市場では募集在庫が減少し、空室率も低下傾向にあることが示唆されています。これは、割安な区画から成約が進んだ結果、募集物件の顔ぶれが入れ替わった影響が大きいと分析されており、市場全体の引き締まりを物語っています。また、2026年度第1四半期の不動産マーケット調査では、東京都心7区のオフィス市況が「拡大期~ピーク」が8割を超え、好況が継続する一方で、物件枯渇による減退懸念も浮上しています。潜在空室率が2%台で低下余地が少なく、平均募集賃料は上昇傾向にあることから、貸手優位の市場が続くと見られます。テナント側は事業拡大による移転が主因ですが、賃料高騰から購入も視野に入れ始めているようです。
総じて、東京都の賃貸オフィス市場は、新規供給による一時的な空室率の上昇は見られるものの、既存ビル市場の安定と、一部エリアでの賃料上昇が市場全体を牽引する構図が続いています。テナント需要は根強く、特に中小規模物件の引き締まりが顕著であり、貸手優位の状況は今後も続くと予想されます。