2026年5月、神奈川県の賃貸オフィス市場は、平均坪単価が16,754円となり、前月比で1.1%下落しました。空室率は5.8%と、こちらも前月から0.1ポイント悪化しており、市場全体として賃料の軟化と空室の増加傾向が鮮明になっています。前月までの上昇基調から一転、足元では価格調整が進んでいる様子がうかがえます。
この価格調整の背景には、新築ビルにおける空室率の高さが影響していると考えられます。新築ビル全体の空室率は39.9%と、依然として高い水準にあります。特に新築大規模ビルでは40.5%に達しており、前月比で1.2ポイントの悪化は、新規供給に対するテナントの取り込みが容易ではない状況を示唆しています。こうした新規物件の需給バランスの緩みが、市場全体の賃料水準を引き下げる要因となっているのでしょう。
一方で、既存ビル市場は比較的堅調な推移を見せています。既存ビル全体の空室率は5.4%と、前月比で0.2ポイントの改善が見られました。既存大規模ビルにおいても5.5%と、前月比0.3ポイントの低下です。これは、既存ビルが持つ安定した賃料や、立地の優位性、そして既存テナントによる増床や新規移転需要に支えられていることを示しています。新築ビルが供給過多となる中で、既存ビルへの需要が相対的に強まっている傾向があるようです。
エリア別に見ると、横浜エリアは平均坪単価17,452円、空室率5.7%と、依然として神奈川県内では最も賃料水準が高く、需要も集まっています。空室率も前月比で0.2ポイント改善しており、市場の牽引役としての存在感を示しています。しかし、横浜エリアでも坪単価は前月比で1.1%下落しており、県全体の傾向から無縁ではないことがわかります。
対照的に、横浜エリア以外の神奈川県内では、平均坪単価15,302円、空室率5.8%と、横浜エリアに比べて賃料水準は低く、空室率も若干高い水準で推移しています。空室率は前月比で横ばいとなりましたが、これは改善も見られなかったことを意味します。このエリアでは、新規物件の供給やテナント誘致の面で、横浜エリアほどの勢いが見られない状況と言えるでしょう。
坪単価のレンジを見ると、20坪から30坪の比較的小規模な区画が平均15,454円/坪であるのに対し、200坪超の大型区画は20,202円/坪と、約4,700円もの開きがあります。この差は、大型区画に集まる企業規模や、希少性の高い物件への需要を反映していると考えられます。しかし、市場全体の賃料下落傾向を考慮すると、これらの高単価区画も今後の価格動向には注意が必要です。
過去5ヶ月の推移を見ると、2026年初頭から緩やかな上昇傾向にあった坪単価は、4月には16,852円まで上昇しましたが、5月には16,233円へと大きく下落しました。この急激な下落は、市場のセンチメントの変化や、新たな供給物件の影響などが複合的に作用した結果と考えられます。空室率も、前月比でわずかに上昇しており、市場の勢いに陰りが見え始めています。
総じて、神奈川県の賃貸オフィス市場は、新築ビルの供給過多とそれに伴う賃料の軟化が顕著です。既存ビルは比較的安定していますが、市場全体のトレンドとして、テナントにとっては選択肢が増え、交渉しやすい状況が続く可能性があります。今後の市場動向は、新規物件の消化状況と、経済全体の動向に左右されると考えられます。