愛知県の賃貸オフィス市場は、2026年9月時点で平均坪単価15,803円、空室数601区画、空室率7.3%となりました。前月比では坪単価が117円(0.7%)下落し、空室率も0.1ポイント上昇するなど、市場全体としてやや軟調な動きを見せています。
特に注目すべきは、新築ビルの空室率の動向です。新築ビル全体の空室率は19.3%と前月から0.6ポイント上昇し、依然として高い水準にあります。これは、7月に新規ビルが竣工した影響も含まれており、新規供給がテナント需要を一時的に上回る状況を示唆しています。一方で、新築大規模ビルに限ると空室率は16.4%と、前月比で0.9ポイント改善しており、大型物件へのテナント誘致が進んでいる様子も伺えます。
対照的に、既存ビル市場は安定した推移を続けています。既存ビル全体の空室率は4.7%と、前月比で0.1ポイントの上昇にとどまり、既存大規模ビルに至っては3.8%と0.1ポイントの低下が見られました。これは、立地やグレードの確立された既存ビルへの需要が根強く、企業がオフィス移転先として依然として魅力を感じていることを物語っています。大規模ビル全体で見ても空室率は5.1%と、前月から0.1ポイント低下しており、市場全体の需給バランスは引き締まりつつあると言えるでしょう。
地域別に見ると、明暗が分かれています。坪単価でトップを走る名古屋市中村区は、19,010円/坪で推移していますが、前月比では732円(3.7%)もの大幅な下落となり、空室率も0.2ポイント上昇して6.9%となりました。これは、一部の大型募集床の新規発生や、テナント側の賃料交渉力の強化が背景にあると考えられます。一方、名古屋市中区は坪単価14,616円/坪と中村区に比べて割安感がありますが、こちらは前月比で174円(1.2%)上昇し、空室率も前月並みの7.7%を維持しています。中区での賃料上昇は、堅調なテナント需要が継続していることを示唆しています。
坪単価帯別で見ると、市場の価格帯の広さが浮き彫りになります。最も安価な20-30坪帯の平均坪単価は13,728円であるのに対し、最高値の200坪以上の大型区画は19,592円と、約5,800円もの開きがあります。これは、企業の規模や事業内容によって求めるオフィススペースの条件が大きく異なり、それに伴って賃料水準にも差が生じていることを示しています。
過去6ヶ月の推移を見ると、2026年4月から7月にかけては坪単価が14,500円台で推移していましたが、8月には14,809円へと上昇し、9月は14,593円とやや落ち着きを見せています。空室率のデータは過去6ヶ月分提供されていませんが、直近のニュース動向では、名古屋市オフィス市場全体で空室率が低下傾向にあり、名駅エリアでは新築ビルへのテナント誘致が順調に進み、募集賃料も小幅上昇しているとの報道もあります。これは、愛知県全体のデータとはやや異なる動きですが、エリアごとの特性や新築・既存ビルの動向が市場全体に影響を与えていることを示唆しています。
東京都心5区の空室率が1%を割り込み、募集賃料が10ヶ月連続で上昇しているというニュースは、全国的なオフィス市場の引き締まり傾向を示しています。大阪市でも同様に募集賃料が上昇傾向にあることを踏まえると、愛知県においても、今後の新規供給の消化状況やテナント需要の動向が、市場全体の賃料水準に影響を与える可能性があります。企業が移転先選択肢の限定から現オフィス再契約を選択する動きも、こうした需給バランスの引き締まりを後押しするものと考えられます。愛知県のオフィス市場は、新築ビルへの新規供給と既存ビルへの根強い需要との間で、今後も動向が注目される状況が続くと予想されます。