愛知県の賃貸オフィス市場は、2026年8月時点で平均坪単価15,920円、空室数532区画、空室率7.2%と、全体としては緩やかながらも上昇基調で推移しています。前月比では坪単価が361円(2.3%)上昇し、空室率も0.3ポイント増加しました。特に注目すべきは、新築ビルにおける空室率の顕著な上昇です。新築ビル全体の空室率は18.7%と、前月から3.1ポイントも悪化しました。これは、新築大規模ビルにおいても同様で、空室率17.3%(前月比+2.0ポイント)と、新規供給が一定のインパクトを与えていることを示唆しています。
こうした新築ビルの空室率上昇とは対照的に、既存ビル市場は堅調さを維持しています。既存ビル全体の空室率は4.6%で、前月から0.1ポイントの低下を見せました。特に既存大規模ビルでは、3.8%(前月比-0.2ポイント)と、より低い水準で安定しており、既存物件への根強い需要がうかがえます。大規模ビル全体で見ても、空室率は5.2%(前月比+0.1ポイント)と、微増にとどまっています。
この市況の背景には、7月に竣工した「明治安田名古屋駅前ビル」のような新規大型物件の供給があります。このビルは名古屋駅前の立地で、共用ラウンジなどを備え、企業の就業環境向上を狙ったものです。こうした新築供給は、一時的に空室率を押し上げる要因となりますが、ニュースリリースにもあるように、新規供給を吸収するほどのテナント需要も継続しており、市場全体の賃料上昇傾向を支えています。
エリア別に見ると、名古屋市中村区は坪単価19,742円、空室率6.8%と、依然として高水準の賃料を維持しています。しかし、前月比では空室率が0.8ポイント上昇しており、新築物件の影響が一部見られます。一方、名古屋市中区は坪単価14,442円、空室率7.7%と、中村区に比べて賃料は低いものの、空室率は-0.2ポイントと改善傾向を示しており、既存物件への需要が安定していることがうかがえます。
坪数帯別で見ると、市場の価格帯の幅広さが浮き彫りになります。例えば、20〜30坪の小規模区画の平均坪単価は14,059円であるのに対し、200坪以上の大型区画では20,189円と、約6,000円もの差が見られます。これは、企業の規模やニーズによって、求めるオフィス空間の単価が大きく異なることを示しています。
過去6ヶ月の推移を見ると、2026年3月以降、坪単価は概ね14,000円台で推移していましたが、直近では14,809円と、緩やかながらも上昇傾向が続いています。空室率のデータは過去6ヶ月分提供されていませんが、直近の動向からは、新築供給による一時的な変動はあるものの、市場全体の需給は引き締まりつつあると推察されます。
ニュース動向では、ハイブリッドワークの普及に対応するための個室ワークスペースの導入(TKP)や、イノベーション創出を目的としたオフィス移転(トランスコスモス・デジタル・テクノロジー)など、多様化する働き方や企業戦略がオフィス選びに影響を与えている様子がうかがえます。こうした変化は、今後のオフィス市場の動向を読み解く上で重要な視点となるでしょう。