HOME > officee magazine > ワークスタイル > オフィスは事業成果を上げるためにある──LINEが導き出した6つの戦略とは
世界中の人と人、人と情報・サービス等との距離を縮める「CLOSING THE DISTANCE」をミッションに掲げ、幅広いサービスを展開するLINE株式会社。2017年4月に渋谷から新宿に移転し、その充実した新社屋が大きな話題となりました。
様々な設備や機能を盛り込んだ今回の新オフィスには、いったいどのような狙いがあったのでしょうか。空間設計のコンセプトについて、LINE株式会社の山根さん・河村さんにお話を伺いました。(公開日:2017/08/03)
(写真右)スペースデザインチーム 山根脩平さん/(写真左)コーポレートコミュニケーションチーム 河村有紀さん
今回LINEがオフィス移転に至った一番の理由は、従業員数が急増し、1箇所のオフィスに入りきらず3箇所に分かれていた拠点を1つに統合するため。2013年の商号変更以来、4年間で従業員数はなんと3倍の1,400名強にまで増えたといいます。
限られた時間内で大規模な移転を完了させるため、スペースデザインチームはもちろん、総務・人事・社内インフラ・デザイン・広報など、様々な部署からなるチームを結成し、プロジェクトを進めていきました。
LINEが大事にしているのは、従業員が事業の成長に集中し、世の中に驚きや感動、つまり“WOW”を生み出すこと。今回のオフィスでは、“WOW”を生み出す環境には何が必要か、それを空間に当てはまるキーワードで表現していきました。それが“WOW”を生み出す6つのスペースストラテジー「FLEXIBLE / SHARING / CREATIVE / SPEEDY / PRODUCTIVE / MOBILE-FRIENDLY」です。
では、これらの要素をどのような形でオフィス設計に落とし込んだのか、具体的にご紹介していきましょう。
事業環境がめまぐるしいスピードで変わっていくなか、企業もその変化に柔軟に適応しなければなりません。
とくにLINEでは、5~6名ほどの小さな単位でチーム自体が構成・分解されるスピードも非常に早い。そこで、いつどこのフロアに行っても同じ環境で働けるようにする必要がありました。執務エリアのレイアウトは、基本的にどのフロアも同じ。固定席では上下昇降デスクが採用され、20ヵ国以上の国籍の従業員が、それぞれの体格に合わせて自分で高さを調節できるようになっているのです。立ちながら作業すると、ちょっとしたリフレッシュになって業務効率があがるといいます。また自席以外でも作業ができるよう、ワークラウンジという共有スペースが設けられています。
執務スペース
ワークラウンジ
執務スペースはとても静かですね。自席は一番集中できる場所としていて、打ち合わせは別の場所で行う従業員が多いです。
社内外の情報共有をスムーズに行う場所として、重要になってくるのが多くの社員が集まり、研修や勉強会などが行える場所です。前オフィスにはMAX50人のセミナースペースがありました。しかしそれだけではキャパシティが足りず、都度ビル内の貸ホールを借りていて非効率だったそう。そこで新オフィスでは、大会議室として最大300人が着席して会議ができるオーディトリアムが用意されています。
また、LINEでは多様な国籍の従業員同士がコミュニケーションできるよう、語学の習得支援に力を入れています。そこで、前回オフィスにもあったスタディブースを拡張しました。
オーディトリアム
スタディブース
スタディブースは、集中して語学を勉強する以外にも、電話での商談など声を出すシーンでマルチに使えるので、非常に人気があります。
新しい発想を生み出すためには、クリエイティブな空間に身を置くことがとても重要。そこで、LINEのオフィスではカフェとゲームラウンジが設置されています。
カフェは、単なる食堂のようなものとは違い、街の中にあるカフェのようなイメージ。ランチ、リラックス、ミーティング、業務スペース、様々な用途で利用できる場所です。ゲームラウンジには、ビリヤード台やダーツが置かれています。他にも、VRを楽しめる最新機種をつかってリフレッシュすることもできるそうです。コミュニケーションを活性化させるだけでなく、新しいインスピレーションが生まれるきっかけづくりになっています。
カフェテリア
ゲームラウンジ
カフェテリアでは100円のサラダバーを提供していて、私もよく利用しています!ゲームラウンジにはビリヤード部やダーツ部の人たちがよく集まってますね。
社内での情報共有スピードを高めるため、LINEのオフィスには様々な工夫が施されています。
まず、執務スペースの会議室に関しては、すべてテレビ会議用のカメラが入っています。多拠点化してきている中で、スムーズにコミュニケーションができるよう工夫されているのです。また、LIVEサービスの動画撮影やスタンプの音撮りなどに使用できるスタジオも新設されました。以前は赤坂や六本木まで移動してスタジオをレンタルしていたため、移動の手間が省けて格段に効率があがったそうです。
カメラ付きの会議室
スタジオ
LINEでは今採用を強化していて、月40人くらい新たに入社しています。社員証の顔写真も社内のスタジオで撮影することができ、とても便利になりましたね。
充実したオフィス環境・制度を整えている背景には、日々の業務においてより生産性を高める狙いがあります。
たとえば、執務スペースのすぐ近くにあるコミュニケーションラウンジ。個室ではない開放的な空間のテーブルにはモニターも完備されていて、ミーティングも可能です。エレベーターから自席に行くまでに人の集まるラウンジを必ず通る動線計画になっているため、話したい人を見つけたら気軽に声をかけコミュニケーションを図ることができます。
また、様々なライフステージの従業員が働きやすくなるよう、社内保育園を整備。ほかにも、社員の困りごとをサポートする「LINE CARE」が設けられています。社内コンビニでは郵便を出したり、ATMが利用できたり、社内でプライベートの用事も済ませることができるため、安心して業務に集中することができるのです。
コミュニケーションラウンジ
社内保育園
従業員の平均年齢は34歳。結婚・出産・育児といったライフイベントを迎える人も少なくありません。ハード面だけではなく、ソフト面でも制度を充実させ、仕事に集中できる環境を整えています。
LINEを活用したIoTをオフィスにも積極的に取り入れるため、自社サービスであるLINEスタンプを使い、照明のコントロールやブラインドの開け閉めができるシステムを実験的に作りました。また、カフェ内での支払いは全て、スマホのおサイフサービス「LINE Pay」に対応しており、現金を持ち歩く必要がありません。
また、今回のオフィスで独自に開発したのが、会議室の「いますぐ予約」システム。以前のオフィスでは、会議室の不足が非常に問題になっていました。予約されているのに関わらず実際には使われていない「空予約」が多発していたのです。その問題を解決するため、新オフィスでは会議室の中に人感センサーが入っていて、室内が10分間無人の状態であれば自動で予約がキャンセルされるようになっています。
「LINE Pay」対応のカフェ
会議室入り口の予約システム
「いますぐ予約」システムはタブレット端末を壁に埋め込んでいるだけ。コストも抑えることができました。
これ以上になく充実したLINEのオフィスですが、あくまでこれは事業成果をあげるための土台。ハード面もソフト面もまだまだ改良が必要で、けっして今が完成形ではない、と言う山根さん。
“WOW”を生み出す拠点として、オフィスが従業員にとって働きやすい場所になるよう、色んな仕組みを社内で共有・浸透させていきたい。ただチャレンジするだけでなく、どんどんブラッシュアップしていけたら。そう語ってくださいました。
いまや私たちの生活に欠かせないコミュニケーションツールとなったLINE。サービスの拡大だけでなく、企業のあり方、そして従業員の働き方についても、更なる挑戦を続けていくことでしょう。
(photo:服部健太郎/text:澤木香織)
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