HOME > officee magazine > ワークスタイル > 【SPBS】こだわったのは、オフィスと本屋の一体感。カルチャーの発信地「奥渋谷」で、様々な人が交差する場所へ
「ヒトとモノとジョウホウが行き交い文化が育まれる場所になる」という企業理念を掲げ、雑誌・書籍の編集や、店舗のプロデュース、イベントの企画立案などを行う、合同会社 SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS(以下、SPBS)。今回は渋谷駅から歩いて15分ほどの「奥渋谷」にある、オフィス兼本屋を尋ねました。
オフィスと本屋、それぞれの空間を隔てているのは、1枚のガラスの仕切りのみ。本屋に訪れた人は、奥にあるオフィスを隅々まで見渡すことができるのです。編集という“裏方”のお仕事を身近に感じられる、非常にユニークな造りになっています。
こうした特徴的な空間設計には、一体どのような思いが込められているのでしょうか?SPBS広報部の品田野乃子さんと編集部の志村優衣さんにお話を伺いました。(公開日:2018/02/22)
品田:はい。入って手前が本屋、ガラスの仕切りの向こうがオフィスとなります。弊社は企画編集会社で、いくつかある事業の一環としてこちらの店舗を運営しています。
品田:オフィスが先、店舗が先とかではなくて、「そこで作って、そこで売る。」を体現するため、最初からこの形でした。これは弊社代表のアイディアで、例えば、村上春樹さんのような作家が、そこの本屋のためだけに書き下ろした作品が少ロットで販売されていたら、面白いんじゃないかという考えがありました。
いまの日本では、版元と書店が別になっていますから、本の作り手と買い手の距離が遠くて、誰が作っているのか、誰が間に入っているのかが分からないし、作っている現場も見えない。だからこそ、作り手と買い手が互いを身近に感じられるような本屋をつくりたい、という思いがあったんです。
「併設」とは言うものの、オフィスと本屋を切り離して考えてはいません。物件を選んだり内装を決めるうえで、譲れなかったポイントがいくつかあって。「作り手が見えること」、「オフィスと本屋を切り離さず一体感を持っていること」、「何年経っても古くさくならないこと」、「表通りからもすべてが見えるような作りであること」などが挙げられます。
品田:「そこで作って、そこで売る本屋」というコンセプトを前提として、感度の高い人が集まる場所に出そう、と考えていました。はじめは原宿・代官山などで物件を探そうとしたんですが、家賃が高くて、とても手が出せなかったんです。
そこで、もう少しエリアを広げて、池尻・千駄ヶ谷・奥渋谷で探していたところ、たまたま代表がこの物件の前を通りかかって。広さも家賃もドンピシャだったので、すぐに入居を決めました。また、代表自身もこのあたりに土地勘があったのが大きな決め手です。
品田:おしゃれな飲食店やショップが集まる街として、近年注目を集めていますよね。SPBSが創業した2008年頃は、今ほど賑わっているエリアではなかったんです。でも、代表は当時から奥渋谷には潜在的な魅力があると感じ、「この場所で地域と一緒に成長していきたい」という思いを持っていました。
社名に「SHIBUYA」と入っているのは、地域とともに成長するという思いの表れです。所在地が渋谷区神山町なので、本当は「神山町」を入れたかったらしいのですが、グローバル化していく世の中の流れを意識し、もう少し範囲を広げて、知名度の高い「渋谷」を採り入れました。
志村:実際、地域の飲食店と合同でイベントを行ったり、ご近所の有名店『アヒルストア』の過去の記事やインタビューをまとめたリトルプレスを出版したこともあります。一緒に地域を盛り上げていく感じがとても楽しいですし、それがビジネスにもつながっているので、今後も色々な企画に挑戦していきたいです。
品田:オフィスと本屋の一体感を表現するのに適した家具を選んでいます。例えば、こちらの平台。オフィスでは作業用のデスクとして使い、本屋では同じものを商品の陳列台として使っています。平台を置く位置にもこだわりがあって。ガラスで区切られてはいるものの、オフィスと本屋が繋がって見えるように、まっすぐ並べているんです。天井から吊っている照明も、手前から奥にかけて一直線になるよう配置しています。
あと、オフィスの壁は黒板になっていて、ぱっと何か書きたいときに重宝しています。黒板の色味にマッチするようにと、平台の木の色も少し濃いめのものを選びました。
品田:実際の面積よりも広く感じますよね。間仕切りはガラス1枚だけなので、オフィスの一番奥にいても、鏡越しに色々なものが見えるんです。本屋の様子はもちろん、道を行き交う人々や、向かいの敷地にある植物まで。とても不思議な感覚です。
品田:はい。2008年ぐらいからシェアオフィス・レンタルスペースを運営しています。創業当初、社員が3、4人しかいなかったので、かなりのスペースが余っていたんです。本屋というのは薄利な商売なので、本の売上だけではなかなか利益が出ない。そんな状況のなかで、代表がアイディアを絞って始めたのがスペースの間貸しでした。
シェアオフィス・レンタルスペース事業といっても、当時はまだ認知度が高くなかったうえに、ビジネスモデルとしても成功例は多くなかったので、今考えるとチャレンジングな決断だったと思います。
品田:デザイナー、編集者、建築家など様々です。入れ替わりはあまりないですね。居心地の良さを感じていただいているのであれば嬉しいです。
志村:入居者同士の交流もありますよ。弊社の編集部では企業さまからの受託編集も行っているのですが、入居者のデザイナーや編集者にご協力いただくこともあります。あと、弊社が発行していた『ROCKS』という雑誌のデザインもお願いしていました。借りている側と貸している側、それぞれにメリットがあると感じます。
志村:私自身としては、仕事で煮詰まった時にふらっと本屋の方に行って、「最近こんな雑誌が流行っているんだ」とか「こんな本が出ているんだ」というところからアイディアをもらうことがあります。気分転換という意味でもすごく役に立っているなと思いますね。
あと、弊社から出している本を店頭に置いているので、その売れ行きや、どんな本と一緒に購入されているかといった情報をすぐに知ることができます。想定するターゲットに届いていないと感じたら、売り方や宣伝方法を変えてみよう、とすぐに方針転換できるのもメリットですね。
売り場の担当者から「本の売れ行きが良い」と聞くのは、編集部員としてもすごく嬉しいです。また、著者や関係者にそれをすぐ伝えることができるので、その本を取り巻く方々のモチベーションにもつながっていると思います。
志村:そうですね。本が生まれる現場を見て、作り手に対する興味や親近感を持ってもらえたら嬉しいです。そもそも私が入社したのも、この本屋にお客さんとして来た時に「ライター募集中」という張り紙を見つけて、応募したのがきっかけなんです。私以外にも、本屋の店員やインターンで働いているスタッフは、入社前からこの本屋が好きでよく通っていたという人が多くて。会社としては求人広告などのコストを圧縮できますし、採用のミスマッチも減らせているのかもしれないですね。
品田:オフィスは、理念を体現する空間ですね。弊社の理念として、「ヒトとモノとジョウホウが行き交い文化が育まれる場所」になることを目指しています。ここに訪れた人同士が交差点のように交わり合うことで、何か新しいものを生み出していけたら、と思います。
志村:私が普段携わっている編集のお仕事は、パソコンさえあればどこでも出来てしまう。でも、オフィスに来ることで社員はもちろん、入居者や本屋のお客さまなど色々な人に会えるので、新しい企画やアイディアが生まれるんです。自分の家では生まれないものがここにはあるので、とても大切な場所ですね。
品田:現在はこの神山町に店舗を構えていますが、今後は他のエリアにもどんどん出店していきたいと考えています。ただ店舗数を増やすだけではなく、「◯◯な本屋」といった形で、店舗ごとに違ったコンセプト、違った切り口で展開したら面白いのではないかと思っていて。神山町は「出版する本屋」で、他にも例えば「学べる本屋」とか「子供と触れ合えるような本屋」とか。具体的な案はまだ企画中ですが、長期的にSPBSブランドを体現できるような場や企画を作っていきたいです。
(photo:服部健太郎/text:五月女菜穂)
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