HOME > officee magazine > エリア特集 > 2020年に向けて池袋が大きく変わる!再開発による「国際アート・カルチャー都市」の誕生で、オフィス市場はどのように変化するのか?
2020年の東京オリンピックに向けて、池袋の街並みが大きく変わろうとしているのをご存知ですか?
池袋といえば「サンシャインシティ」や「池袋ウエストゲートパーク」、繁華街などのイメージが強く、少々雑多で危ない印象を持っている方が多いかもしれません。そんな池袋が、“オタク文化の聖地”としての強みを活かしつつ、文化の発信拠点として様々な再開発事業を計画・実行しているのです。
「池袋に会社があるのはちょっと…」「できれば通勤はしたくないな」と思っている方も、再開発で生まれ変わる街並みを知れば、きっとイメージが変わるはず!
そこで今回は、大規模な都市計画がスタートするまでの経緯や、新たに完成する施設、今後のオフィスニーズに関する展望について考察してみました。
豊島区に大きな衝撃が走ったのは、2014年5月のことでした。
「消滅可能性都市」として東京23区内で唯一、豊島区が選ばれてしまったのです。
「消滅可能性都市」とは、日本創生会議が打ち出した「少子化や人口移動などが原因で将来消滅する可能性がある自治体」のこと。具体的には、20~39歳の女性の数が2010年から40年にかけて5割以下に減るなどの基準がありました。
特に池袋は住宅情報サイト「SUUMO」の住みたい街ランキングで3位(2014年当時)を獲得していたこともあり、この選定結果に対して反発の声が多く挙がりました。しかし、これを受けた豊島区はすぐに緊急対策会議を開催。翌2015年には「豊島区国際アート・カルチャー都市構想」を策定し、持続発展都市を目指して新たな取り組みを進めていくことに。
ちなみに豊島区国際アート・カルチャー都市プロデューサーには、チームラボ代表の猪子寿之氏や、アニメイト会長の高橋豊氏、ナムコ取締役会長の橘正裕氏、ドワンゴ取締役CCOの横澤大輔氏など、そうそうたる面々が揃っています。
2016年には「まち全体が舞台の誰もが主役になれる劇場都市」を基本コンセプトとして定めます。大規模再開発の対象となったのは、もちろん豊島区の中心地である池袋です。
出典:豊島区
既に2020年の東京オリンピック開催が決定していたこともあり、事業は急ピッチで進められました。限りある区の財源を考慮し、民間企業との官民一体による再開発を進めていくことになったのです。
2019年~2020年にかけて一気に竣工・リニューアルオープンが予定されていますが、主な再開発事業はご覧の通り。
出典:豊島区
豊島区が目指す「まち全体が舞台の誰もが主役になれる劇場都市」とは、一体どのような街なのでしょうか?
多数ある再開発事業の中から、注目の施設をご紹介したいと思います。
出典:サンケイビル
池袋駅の北東に位置する中池袋公園に面した旧庁舎・旧公会堂跡地の活用事業として、「Hareza(ハレザ)池袋」を建設中。新ホール棟・新区民センター・オフィス棟が一体となっています。国際アート・カルチャー都市構想の中核を担い、2020年春にグランドオープンする予定です。「Hareza池袋」という名称は公募5,000件の中から選ばれたもので、ちょっぴりおめかしして出かける特別な場所、非日常を体験できる「ハレの場」と、劇場・多くの人が集まる場所「座」を掛け合わせているそうです。
Hareza池袋の最大の特徴は、3棟あわせて8つの劇場を備えていること。ミュージカルや伝統芸能を公演するホールや、アニメ、サブカルチャーを楽しめる空間など、多様な施設で来館者を楽しませます。ドワンゴとポニーキャニオン共同による未来型ライブ劇場「ニコファーレ池袋」が入るほか、オフィス棟のシネマコンプレックス部分(2~6階)には、TOHOシネマズ池袋(仮称)が出展することが決定しています。
出典:東急不動産
2019年夏頃に開業予定の、東池袋一丁目シネマコンプレックスプロジェクト。東急不動産によって建設中で、池袋駅東口のサンシャイン通りに位置します。12スクリーン・2,500席を有し、首都圏最大級のシネコンとなる予定です。池袋東口エリア最大級の商業ビルとして、街の賑わいを創出していきます。
地上14階建てで、4階から14階までは映画館などが入ります。地下1階から地上3階には、エリアの特性に合わせた個性的な店舗が集積。多様性や回遊性の高まりが期待されている池袋東口エリアにおいて、存在感を発揮しそうです。
「劇場都市」としての構想は、商業ビルだけにとどまりません。池袋駅周辺にある東西合わせて4つの公園で整備事業が行われ、文化の発信地として新しく生まれ変わります。
1つめは、2016年に一足早くリニューアルを終えた南池袋公園。開放的な芝生の広場でくつろげるだけでなく、敷地内にはおしゃれなカフェレストラン「RACINES FARM TO PARK(ラシーヌ ファーム トゥー パーク)」もあり、憩いの場として幅広い世代から人気を集めています。
2つめは、テレビドラマ「池袋ウエストゲートパーク」の舞台としても知られる池袋西口公園。「劇場公園」として2019年秋頃にリニューアルオープン予定です。ステージと大型のスクリーンを使い、オリンピック観戦をはじめとするパブリックビューイングや、演劇、コンサート、フルオーケストラなど、様々なイベントが開催されるそう。こちらは池袋西口唯一の公園整備事業となっています。
3つめは、2019年秋頃にオープン予定の中池袋公園。アニメファンの女子たちが集う場所で、毎年開催されているイベント「池袋ハロウィンコスプレフェス」でも有名です。すぐ目の前にHareza池袋が完成することによって、8つの劇場に囲まれた公園として生まれ変わります。すぐ近くには乙女ロードから移転したアニメイト池袋本店もあり、Hareza池袋の完成と中池袋公園のリニューアルによって、オタク文化の中心地としてますます活気を帯びてくるでしょう。
そして4つめは、2020年春頃、サンシャインシティの裏側に完成予定の(仮称)造幣局地区防災公園です。造幣局跡地に建設されています。ヘリポートや救援物資の搬送拠点として活用できるオープンスペースを整備するなど、防災機能を備えたにぎわいの拠点として機能。フラットな広場を活用した野外イベントやペットイベント、スポーツイベントなどを開催するそう。
出典:豊島区
そして、4つの公園を周遊する「池袋副都心移動システム(電気バス)」が2019年中の運行開始を目指しています。低速電動コミュニティビークルを導入し、時速19キロ程度でゆっくり巡回するとのこと。車体やバス停、関連施設、チケット、運行ルートまでも含めた総合デザインを、日本を代表するデザイナー・水戸岡氏が担っています。
出典:豊島区
豊島区は、2019年の「東アジア文化都市」国内候補都市として選定されました。「舞台芸術」「アニメ・マンガ」「祭事・芸能」の3つを柱に、日中韓3都市間を中心とした交流事業を実施するなど、誰もが楽しむことができる交流イベントを展開していくとのこと。
池袋における大規模再開発は、近隣住民のみならず、東京、日本、ひいてはアジアにとっての期待であると言っても過言ではないでしょう。
今回の再開発で主に建設されるのは商業ビルですが、オフィスとしてのニーズにはどのような変化があるのでしょうか?
もともと池袋は、電車で大宮方面、もしくは高速道路で北関東方面へのアクセスが良いこともあり、人材やメーカーなどの企業に人気があるエリア。しかし、北側エリアの歓楽街をはじめ治安の悪いイメージがあり、新宿や東京などの他エリアに比べて人気が低い傾向にありました。
今回の再開発で、公園の整備なども含めて街の景観が大きく変化することにより、「池袋は危ない」というイメージは徐々に薄れていくはず。国際アート・カルチャー都市関連以外にも、豊島区は「持続発展都市対策の4つの柱」として、女性にやさしいまちづくりや高齢化への対策などの事業計画を立てています。
また、「アニメ・マンガ」をはじめ文化の発信地としての地位を築くことによって、2020年に向けて一層増えるであろう訪日観光客をターゲットとした、インバウンドビジネスが加速していくかもしれません。また、2013年にはニコニコ本社が原宿から池袋に移転しているほか、ソーシャルゲームの開発などを手がけるオルトプラスもサンシャイン60への本社移転を発表。今後、地の利を活かして事業を加速させる企業が増えることにより、池袋の評価が上がっていくことが期待されます。
2019年竣工のダイヤゲート池袋ビル(池袋旧本社ビル建替え計画)、2020年春に竣工予定のHareza Tower(Hareza池袋のオフィス棟)と、大型オフィスが続けて竣工予定。並行して公園整備事業なども着々と進み、変化した池袋の街並みを見ることによって移転を決める企業も増えてくるでしょう。
従来のイメージを払拭し、「働きやすい街」として進化を遂げつつある池袋。今後もその変遷に注目していきたいところです。
(公開日:2018/09/12)
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