HOME > officee magazine > エリア特集 > 人形町・茅場町にスタートアップが集積?「カヤバレー」構想で進むフィンテック・AR/VR誘致
スタートアップやベンチャー企業が集まる場所といえば、真っ先に名前が挙がるのは「渋谷」や「六本木」。しかし、このエリアは現在非常に空き物件が少ない状況で、成長企業の増床&採用ニーズを満たすことができなくなっています。
拡張移転したいが床が足りない(空室がない)企業の多くは、近隣の恵比寿や目黒に移転。他にも、コストパフォーマンスとの兼ね合いで五反田が選ばれるケースも多く、その勢いは「五反田バレー」として一躍有名になりました。
しかし、五反田ブランドも第三のスタートアップ聖地としての認知度が高まり、移転企業が殺到したことで空室が無くなってしまいました。最近では、三田・田町などへ移っていく企業が増えるなど、第四・第五のスタートアップ聖地を求める動きが活発化しています。
その1つとして最近注目を集めているのが、人形町・茅場町エリアです。
人形町駅前の様子
人形町エリアは、老舗のレストランや居酒屋・飲食店が軒を連ね、古き良き下町のような落ち着いた雰囲気が特徴です。
一方、茅場町エリアは東京証券取引所があるなど、昔から金融街として有名な街でした。「日本の実業家の祖」として有名な渋沢栄一がこの地に第一銀行を立ち上げ、日本のビジネスの中心街として栄えてきた歴史があります。現在も、証券会社や大手金融機関の関連会社が多く集まっています。
しかし、2009年に株券の電子化が実施されて以降は、茅場町エリアにオフィスを構える必要性が薄まり、こうした企業が都内各所へ移転していきます。そんな中、いわゆるフィンテック(FinTech)と呼ばれる「テクノロジー×金融」を扱うスタートアップを誘致しようという気風が高まってきたのです。
◆人形町・茅場町周辺のスタートアップベンチャー企業一覧(50音順)
・UPWARD
・welp
・JPPVR
・SORABITO
・TesTee
・ネットスターズ
・Handii
・VRaiB
・Free-D
・ロボット投信
・アウトオブザボックス
◆人形町・茅場町周辺の証券会社一覧(50音順)
・岩井コスモ証券
・SMBC日興証券
・エース証券
・岡地証券
・岡安証券
・共和証券
・極東証券
・山和証券
・立花証券
・ちばぎん証券
・内藤証券
・広田証券
・三木証券
・三田証券
・山二証券
茅場町エリアでは、渋谷・ビットバレーや五反田バレーに次ぐバレー構想として「カヤバレー」と名付け、この界隈を盛り上げていこうとする流れが起こっています。2017年9月には、フィンテックスタートアップ向けのスモールオフィス「FinGATE KAYABA」がオープンするなど、ビジネス拡大やコミュニティ形成、他企業との協業を促進する拠点づくりが進められてきました。
最近はフィンテックのみならず、ARやVR分野のスタートアップも多くオフィスを構えるようになり、誘致の幅をより一層広げている印象です。2016年にVR特化型インキュベーション施設「Future Tech Hub」がオープンして以降、その勢いは留まる気配がありません。
古くからの金融街に誕生した「FinGATE KAYABA」
***
なぜ今、こんなにも人形町や茅場町にスタートアップが集まっているのでしょうか?
1つめは、賃料が手頃であること。東京都内のオフィス物件の賃料は、2018年頃から高騰続きとなっていますが、人形町・茅場町エリアは比較的相場が抑えられているため、スタートアップやベンチャー企業にとっては大きなメリットとなります。近年は、スタートアップ向けに内装付きの「セットアップオフィス」が募集されるなど、初期費用を下げつつ移転したい企業にとって有利な選択肢が増えてきました。
2つめは、アクセスの良さ。銀座線や日比谷線を利用することで、渋谷や六本木、東京などに出やすく、都内主要エリアのみならず国内各地へ移動する際のハブ拠点として機能させやすいという点が挙げられます。
そして、3つめは充実した飲食環境。特に人形町エリアは、地元に根付いた個人店やチェーン店など、さまざまな飲食店が豊富で、手頃な価格でランチを楽しむことができます。従業員満足度を考える上では、見落とせないポイントです。
こうして、徐々にスタートアップが増えつつある人形町・茅場町エリアですが、すぐ近くの日本橋エリアも現在再開発の真っただ中で、大手企業の移転や新興企業の誘致などにより街の景観が大きく変わっていきます。今後どのような企業がこのエリアにオフィスを構えるのか、その動向に注目していきたいところです。
(公開日:2019/07/17)
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