HOME > officee magazine > ワークスタイル > はたらく場所って、こんなにもあたたかい。ほぼ日で見つけた、しあわせなオフィスの隠し味。
「働き方改革」があちこちで叫ばれている、今日このごろ。
IT環境の整備、生産性の向上、業務効率化、コミュニケーション活性化‥‥。
気詰まりな言葉が、日々私たちの頭上を飛び交っています。
でも、ふと思ったりするんです。
身動きがとれないほどガチガチに固められた働き方で、私たちは幸せなのでしょうか?
時代の波に乗り遅れまい、と合理的な働き方を求めるあまり、何か大切なものを置いてきてしまったのではないか、と。
いま一度原点に帰って、「働く」の本質を見つめたい。
働く「場所」のあるべき姿って、どんなものなんだろう。
そのヒントを探るべく、今回ほぼ日さんのオフィスにお邪魔することにしました。
ほぼ日さんといえば、1998年の創刊以来、毎日更新されている「ほぼ日刊イトイ新聞」。
驚きや発見が詰まった、そして読み終わると心がちょっぴり元気になるような、素敵なコンテンツが盛り沢山です。
制作に携わる社員の皆さんも、きっと自分らしく、生き生きと働いているに違いありません。
いったいどんなお話が聞けるのでしょうか?
出迎えてくださったのは、総務担当の小竹さんと、人事担当の趙(ちょう)さんです。
──:
はじめまして。今日はほぼ日さんのオフィスのこだわりや、働き方について、色々とお話を伺いたいなと思っています。
小竹:
ちょう:
小雨のなかお越しいただいて、ありがとうございます。よろしくお願いします。
──:
今日はじめてこちらに伺ったんですが、オフィスに入った瞬間、木の香りがふわーっとただよってきて。とても気持ちが良いですね。
小竹:
はじめていらっしゃる方によく言われます。私たちはいつも居るので、もう鼻が慣れてしまっているのですが(笑)。木を使った内装は、移転前から変わらずで。
──:
エントランスを入ってすぐの、螺旋階段も目に止まりました。2層吹き抜けで、面白い造りだなぁと。
ちょう:
螺旋階段は元々ビルに付いていました。2016年に移転してきたのですが、入ったばかりの頃は、連絡報告会の司会が上から号令かけたりして。すごく楽しかったですね。
小竹:
最初は2層だと使いづらいのかな、と思ったりもしたんですが、けっしてそんなことはなく。上からオフィスを見下ろすと、視点ががらっと変わるんです。俯瞰するというか。目線が違うことの楽しさがあって。
──:
たしかに、気持ちの切り替えになりそうです。
ほぼ日さんのオフィスって何かこう、すごく自然体で、温かみがあるなぁ、と感じて。木や緑が多い内装っていうのもあるんですけど、奥でみなさんが働いている様子を見ても、すごく和やかで楽しそうだなぁ、と。何か、普段から大切にしていることだったり、テーマにしていることってあるんですか?
ちょう:
オフィスという点で言うと、そうですね‥‥。以前、糸井が慕っている思想家の吉本隆明さんに「吉本さんの考えるいい会社ってなんですか?」と尋ねたところ、2つ挙げられたことがあって。
──:
2つのポイント、ですか。
ちょう:
ええ。1つめは、日当たりが良く明るくて、外に出たら美味しいものがあったり、喫茶店でちょっと休めたりすること。もう1つは、何か文句をいいたい時に先輩に愚痴が言えること。
──:
ほぉ‥‥。いい意味で会社っぽくないというか。
ちょう:
日当たりというのは立地の問題だったりするけど、美味しいものと愚痴が言える環境というのは、オフィスの中で文化としてできていくものなんですよね。
──:
日当たりという点で言えば、たしかにビルの最上階ということもあってとても明るいですね。眺望も開けていて。ちなみに、こちらの会議室の名前「FUJI」っていうのはもしかして‥‥?
小竹:
そうなんです、この部屋から遠くに富士山が見えます。今日は残念ながら曇っちゃってて見えないですけど‥‥。
ちょう:
あと、むこう(執務スペース)からは神宮の野球場が見えたりして。野球好きのメンバーが多いので、テンションがあがるみたい(笑)。
──:
ちなみに、お部屋の名前は全部違うんですか?
小竹:
はい。壁に飾ってある絵画からヒントを得たり、アーティストの方が好きな食べ物の名前を使ってみたり。
──:
(奥の部屋をのぞいて)あっ、あそこは「パン屋」ですね。その隣は、「温泉」!
小竹:
一般的に社長室と呼ばれるお部屋は「bouillon(ブイヨン)」と言って、糸井の愛犬の名前なんです。社長室って呼ぶとみんなが来にくくなってしまうから、ということで。
──:
そうなんですね。どれも愛着が湧きそうな名前ばかり!もう1つの、美味しいものについては?
小竹:
外に出て、ということではないのですが、週1回、みんなで給食を食べています。フードコーディネーター飯島奈美さんのお母さまを中心に、手作りの料理をつくっていただいて。
──:
えーっ、すごい!100名分の給食を、毎週手作りで?
小竹:
ええ。いつも朝8時半ぐらいから仕込みをしてくださって。量もしっかりあるし、旬の食材を使っていて、とても美味しいんですよ。メニューも毎回違うんです。
実はこの日、ちょうど週に1度の給食の日ということで、その様子をちらっと見せていただきました!キッチンでは、お母さんたちがテキパキと給食を準備中。
1つ1つ、ていねいに盛り付けていきます。
12時半になると、給食の合図が。さすがに一気に100人は入らないので、前半後半に分けています。続々と螺旋階段をのぼっていく皆さん。
手作りのお料理を囲んで。席は完全に自由なんだそう。今日の主菜は麻婆ナスでした。美味しそう!
──:
あと、愚痴を言える環境について。これはなかなかユニークですね。
ちょう:
積極的に愚痴を言う、ということではないんですけど‥‥。素直になるってことなのかな。仕事しているとどうしても、「なんかさ」って言いたくなる時ってあると思うんです。それを自分のなかに溜め込まないで、ちゃんと伝えることも大事だよねって。
以前、会議の場で、すごく大事なことってほんとは紙に書けなかったりするよねと、糸井に言われたことがあったんです。あと、社内ミーティングではよく、「実際のところどう思ってるの?」といったような、本心について問われることもあります。
──:
ちょっと、どきっとする質問ですね。
ちょう:
追求とかではなく、さらっと(笑)。人って、自分でも気づかないうちに、まるくおさめよう、うまく進めようとして、つい本当の気持ちに蓋をしちゃったりする。だから、建前じゃなくて本音を話そうよって。
小竹:
ほぼ日のお仕事は動機にもとづいていて、上から下りてくるのではなくて、現場にいるメンバーの動機からはじまるんです。だからこそ、自分に嘘をつかないというのはとても重要で。
ちょう:
嘘って、普通つかないでしょう?と思われるかと思いますが、面白くないのに「いいですね」って言ったりするのも、ほぼ日では嘘になってしまうんです。自分にも、周りにも、つくろわないこと。ほぼ日のコンテンツを楽しんでいただけるものにするために、社内の人もちゃんと本音を伝えることが大事なんだと思います。
──:
うーん、まさにコンテンツを大切にしているほぼ日さんならではだなぁと。すごく興味深いです。ほかにも意識していることってあるんですか?
小竹:
これはオフィスに限らずなんですけど、普段からほぼ日が大事にしているのが、「まぜる」ことと「ひらく」こと。
──:
おっ、また新しいキーワードが。「まぜる」というのは?
小竹:
たとえば、年に3回、くじ引きで席替えをするんです。部署ごとではなく、完全にごちゃまぜで。私のようなバックオフィスの人が、デザイナーと編集の間にはさまったりする。そうすると、今日はこの企画の原稿を書いてるとか、がんばって奔走されてる様子とか、すごく間近に感じるんですよね。
──:
たしかに、部署ごとに固まった方が効率は良さそうだけど、一つ島を隔てるともうどんな仕事をしているのか全然分からなかったりします。
小竹:
もしも部署ごとに島が分かれてたら、すこし他人事のように、なんか最近大変そうだなぁ、ぐらいにしか思わないかもしれません。
ちょう:
以前糸井から、管理部門とクリエイティブ部門のフロアが別になっていたオフィスがあって、フロアが分かれていたからか、「上のやつらは~」みたいにして対立する感じでお互いのことを言ってた、という話を聞いたことがあります。異なる担当同士で意見をたたかわせる場面もあると思うのですが、お互いのことを知らない環境だと対立が生じてしまうのは仕方がない状況かもしれません。周囲を見渡してお互いの状況を理解しやすいように、執務スペースはできるかぎりワンフロアにしたいと思っています。
──:
ちなみに、席がばらばらだと、同じ部署同士のコミュニケーションってどういう風に?
小竹:
もう、その人の席に足しげく通って(笑)。
ちょう:
こたちゃん、こないだは泳いで来てくれたもんね。
小竹:
クロールで(笑)
一同:
(笑)
──:
ただ行くだけじゃなくて、ちょっぴりアレンジ加えてみたり(笑)
ちょう:
はい(笑)。でもほんと、みんな結構頻繁に行き来してますね。もちろん定例会議もするし、部署によってはチャットを使ったりすることもあるけど、1対1ならぱぱっと行って話した方がスムーズ。で、その会話がまわりの人たちに聞こえることで、「あぁ今こんなことやってるんだ」って思えるのもあって。色んな会話が飛び交っているから、いい意味で聞き耳をたてたりしてます(笑)。
──:
近くで聞こえた会話にちょっと参加して、みたいなことも多いんですか?
ちょう:
あります、あります。ほぼ日のコンテンツって、自分が作り手、送り手の立場であると同時に、誰か別の人が進めている企画に対してはお客さんと同じ立場でもあるんです。
──:
あぁ‥‥たしかに。フラットな立場ですね。
ちょう:
そうやって一つの企画に作り手と受け手の視点が加わることで、軸がどんどん出来上がっていくんですよね。だからこそ、みんな周りの会話にも積極的に参加していくというか。
小竹:
そうですね。ずっと見てて思ったんだけど、とか、単純にそれいいね!とか。
──:
なるほどー。ではもう1つのキーワード、「ひらく」というのは?
ちょう:
社内の様子を外に見せる、外にひらくっていうのも大切だと思っていて。たとえば、ほぼ日に「ただいま製作中!」っていうコンテンツがあるんですけど。
──:
あっ、はい。すごく好きなコーナーです。社内の様子がすごく伝わってきますよね。
ちょう:
書いているのは、日常の他愛もないことだったり、普段働いてる様子だったり。で、それを見た乗組員のご家族が、「うちの◯◯ちゃんが出てた」って、すごく喜んでくれるみたいなんです。
(※ほぼ日では、従業員のことを「乗組員」と呼んでいます)
──:
それはとても嬉しいですね。
小竹:
はい。会社でどんなことしてるのか、ちらっと垣間見えるだけで安心感があって。ご家族に仕事のことを理解してもらうことは、ほぼ日では大事だと思います。
ちょう:
あとは‥‥やっぱり、フグかな?
小竹:
フグですね(笑)。
──:
??
ちょう:
オフィスでフグを飼ってるんですよ。で、その水槽ごしにオフィスが見えるように、フグカメラを設置して。サイト上でも配信してるんです。
──:
わー、ほんとだ!小さくて可愛い‥‥!
ちょう:
これで、今オフィスに電気がついてるんだなとか、家族がここにいるんだなっていうのが分かる。
小竹:
フグはもうずいぶん長い間飼ってるんです。
*こちらがそのコンテンツ、「今日もフグは。」
一発でフグが見れたらラッキー!かもしれません。
──:
では、最後に。少し概念的な質問になってしまうのですが、ほぼ日さんにとってオフィスってどんな場所ですか?
ちょう:
うーん。そうですね‥‥。来たくなる場所、かな。昔、糸井がそう言ってたことがあって、それを聞いてとてもいいな、って思ってたんです。会社が自然と来たくなるような場所だったらいいなって。行きたくない、休みたいとかじゃなくて、ここにきたら面白いことがあるぞって思えるところ。
──:
面白いことを求めて、つい行きたくなるような。
ちょう:
ええ。自分の仕事を、全力で面白がれる。働くって、本当はとっても面白いことなんだと。それが自然にできる場所だといいなって。そういえば糸井が、オフィスのこと幼稚園みたいって言っていたんですよね。
──:
幼稚園、ですか?
小竹:
ここのオフィスをつくるときの思いで、幼稚園というのがキーワードの1つにあって。小学校にあがるとどうしても、規則に従わなければならなかったり、周りの子たちとの関係性を保ったり、人から自分がどう見られるかに比重を置いた言動が増えますよね。幼稚園は、その前の段階の自由な場所で。
──:
はぁー、なるほど!
小竹:
何かに縛られることなく、自由な発想を大事にしたいっていう気持ちがあって。天井の高さも、その自由の現れだったらいいなと思ってるんですけど。そういう幼稚園らしさみたいなものを、オフィスに取り入れたい、という話はよくしていました。
ちょう:
のびのびはしてるよね。規則もできるだけ自由度が高くなるようにしていて。
──:
幼稚園っていうのと関係があるかどうか分からないんですけど、受付で待ってたときに小さいお子さんを見かけたんですが…?
ちょう:
あっ、それうちの息子‥‥。すいません(笑)
──:
いや、あの、ごく自然にドアを開けて入っていかれたので、びっくりして(笑)
小竹:
乗組員のお子さんも、結構オフィスにいらっしゃるんですよ。夏休みとか、どうしても近くで見てなきゃいけないときとか。
──:
へぇ、そうなんですね!
ちょう:
うちの子ども、すごい会社が好きなんですよ。なんかね、行きたいって。
小竹:
えっ、ほんとですか!嬉しい!
ちょう:
もちろん甘えてばかりでは絶対だめなんですけど、みんな子どもに声掛けて話し相手になってくれたり、お菓子をくれたりして。子どもはすごく喜んで。
──:
最近は社内保育園を整備する会社も増えてますが、ほぼ日さんでは特にそういった施設は作っていないですよね?
ちょう:
いまはまだ作ってないんです。なのでうちの子なんかは、普通に執務スペースの近くで学校の宿題やってます。
小竹
あとは、上に和室があって。乳幼児のお子さんとかは、そこに。
──:
働いてるすぐそばにお子さんがいても、全然問題ないんですか?
小竹:
そうですね。いい意味で気にしたり気を遣ったりしない。むしろ、すごく嬉しいことで。緊張感が社内に充満してたら、お子さんもきっと来たいなんて思わないと思うし。健全な証拠かなって。
──:
とても勉強になりました。まだまだお話お伺いしたいところなんですが、本日はこのあたりで。お時間いただき、ありがとうございました。
小竹:
ちょう:
こちらこそ、ありがとうございました。
***
お2人と色んな話をして、オフィスの中を案内していただきながら、心の中で凍りついていたものがすーっと解けていくような気がしました。
ほぼ日さんのオフィスって、なんだかはじめてきた場所じゃないみたい。
どことなく、懐かしさみたいなものがあるんです。
とても人間らしさがあって、血が通っているなぁ、と。
タイムカードの脇には、給食の献立が貼ってあって。
宿題に飽きちゃった男の子と、乗組員のお姉さんがおしゃべりしてて。
お昼の時間になったら、みんなが一斉に集まってきて。
そんなあたたかい風景が、素直に羨ましく思いました。
あれこれ頭でっかちに考える必要なんて、無かったんだなぁ。
ちょっとした意識や一人ひとりの心持ち次第で、働く場所はぐんと良くなるはず。
フグはすぐに飼えないけれど、私もまずはクロールからはじめてみようかな、なんて。
最後に、ほぼ日さんの魅力をたっぷりと見せてくださった、小竹さんとちょうさん。改めて、ありがとうございました!
(photo:森田剛史/text:澤木香織)(公開日:2017/09/14)
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