HOME > officee magazine > ワークスタイル > 【TABIPPO】テーマは「旅するように働き、生きる」。働き方もオフィスも、社員の“理想”を実現するために改革していく
「旅で世界を、もっと素敵に」を理念として2014年4月に設立された、株式会社TABIPPO。旅をテーマにした日本最大の野外フェス「旅祭」を運営するほか、旅についてのイベント「旅大学」を年間100回以上開催したり、WEBメディアや書籍で旅情報を発信するなど、多岐にわたる事業展開をしています。
同社のオフィスは、JR代々木駅から徒歩30秒という好立地。株式会社大学スポーツチャンネルと共同契約して、ワンフロアをシェアしています。社内外の仲間とDIYで作り上げたというオフィスや、「旅するように働き、生きる」というテーマについて、代表取締役社長の清水直哉さんに話を伺いました。(公開日:2018/02/27)
一番の目的は、イベントスペースを社内で確保するためです。TABIPPOは年間で100回ほどイベントを実施しているのですが、その都度社外の会場をレンタルするとコストがかさんでしまうので、社内にイベントスペースをつくりたいなと思っていました。
ただ、1社だけでオフィスを借りた場合、荷物を置く場所やワークスペースを確保して、更にイベントスペースも…となると、必然的に賃料が高くなってしまいます。しかも、イベントは常時行うわけではないので、使っていない時間帯はスペースを余らせてしまって勿体無いですよね。そこで、弊社と同じくイベントを頻繁に開催する大学スポーツチャンネルと、共同でオフィスを契約することにしたんです。あちらの代表と僕は元々知り合いだったので、スムーズに話を進めることができました。
オフィス探しのポイントとしては、来場者がアクセスしやすい立地を意識していました。最終的に代々木を選んだのは、山手線の西側に住んでいるメンバーが多かったからです。この物件は改札を出て30秒という好立地なのですが、偶然空きが出たのですぐに入居を決めました。
やはり、一番は面積効率の良さですね。どちらかがイベントをやっている時は、もう1社はスペースを詰めて作業したりしています(笑)。あと、TABIPPOでは「旅をしながら働く」ことを推奨しているので、オフィスに来ているメンバーが日によってバラバラなんですね。そう考えると、スペースを無駄にしないためにも、別会社とオフィスを契約するメリットはすごくあると感じます。
あとは、単純に人数が多くて楽しいですよ。仕事とか関係なく、メンバー同士が仲良くなるんです。間仕切りもしていないので常にお互いの様子が見えるし、いい意味で刺激を受けますね。入居当初は多少の懸念もありましたが、思った以上にうまくやれていると思います。
僕の両親が設計士をやっていることもあって、「いつかオフィスのDIYをやってみたい」という思いがあったんです。物件を探している時から、DIYができるかどうかは意識していました。
僕たちはイベントを開催することが多いので、普通のオフィスみたいな空間ではなく、みんなが気軽に立ち寄れるカフェのような雰囲気にしたいなと。僕が入っている社会人サッカーチームにデザインをやっている知り合いがいたので、図面を描いてもらって、配置などを一緒に話し合いました。
2015年12月頭から始めて、1か月ぐらいかかりましたね。思った以上に大変で、正直会社つぶれるかと思いましたよ(笑)。通常業務と同時進行だったので、期間中は毎日のようにオフィスへ通いました。
まず最初は、床を壊すところから始めて。配線ケーブルを収納するために床が少し高くなっているOAフロアだったので、まずそれを取り払いました。そして、壁紙を剥がして、蛍光灯を取り外して…。材料はほとんどホームセンターで買いました。おかげさまで、DIY関連の商品にはすごく詳しくなりました(笑)。
そうなんです。せっかくDIYをするなら、色んな人に参加してもらいたいと思って。そもそも自分たちだけでは作りきれないというのもあったのですが、その時に作ってくれたメンバーがオフィスに来ると「この板は私が貼ったんだよね」と語れるじゃないですか。そうやって思い入れのある場所にすることで、より訪れやすいオフィスにしたかったんです。
TABIPPOには旅好きな人のコミュニティーがありますし、大学スポーツチャンネルはアスリートの大学生とも繋がりが深いので、本当に沢山の方が力を貸してくださいました。1か月間で延べ300人ぐらいは来ていただいたと思います。
壁から天井からワークスペースの棚に至るまで、ほぼすべてのものが手作りなので、とにかく大変でした。その中でも一番大変だったのは、床を貼ることですね。僕も大学スポーツチャンネルの代表も、デザインに関するこだわりが強くて、床材の敷き詰め方まで手を抜きたくなかったんです。壁際は端材の長さを調整する必要があるので、非常に苦労しました。ただ、大変だった分愛着は湧きますね。
木材を1枚ずつ貼り付けて作った床
はい。せっかくだから僕たちがDIYしているのを社外の方に見てもらって、オフィス移転というプロジェクトを1コンテンツとして楽しんでもらえるようにしました。特に、Facebookでの反響は非常に大きかったです。
移転について積極的に公開したことで、良い効果もありました。面白そうなオフィスだから行ってみたいとお声がけくださる方が増えましたし、以前までシェアハウスにいたTABIPPOが初めてオフィスビルに入るということで、会社が次のフェーズに入ったことを認知してもらうきっかけになったと思います。
メンバーに合わせた多様な働き方を受け入れていることです。TABIPPOは「旅するように働き、生きる」というテーマを掲げています。旅に限らず、生活スタイルや人生設計によって自由に働き方を変えることができます。
僕が尊敬しているサイボウズの青野社長が「人間は理想に向かって行動する」という言葉をおっしゃっていて、これはまさに真理だなぁと。「こうなるといいな」と思うものすべてが理想であり、人はその理想を実現したいがために行動をするんです。たとえばTABIPPOで働くという行動も、その人の理想を実現するためであるべきだと思っていて。働くために働く、というようなことがあってはいけない。その人が理想とする働き方や生き方が実現できないなら、TABIPPOにいる意味があんまりないじゃないですか。
だからこそ、メンバー1人1人としっかり話をして、一緒に理想をすり合わせていくことが大事だと思っています。極端な話、週7で働くぐらいの勢いで仕事をしたい人がいてもいいし、長期休暇をとって旅に行きたい人がいてもいい。もちろん、時短や在宅もOKにしています。
旅するならいつでも会社を休んでいい、という制度を設けています。TABIPPOのメンバーは元々そういう働き方・生き方をしたいという人が多いので、みんなこの制度を利用していますね。
どうやって休みの管理をしているんですか?とよく聞かれるんですが、実はほぼ管理をしていないんです。休んで旅をすることに対して、誰かに承認をもらう必要もありません。みんなそれぞれ自主的に休んでますね。
もちろん、休んでいるメンバーのサポートはしっかりできるよう、社内での連携は欠かせません。コミュニケーションをとりながら、信頼関係を築いています。
自由って、意外と大変なんですよね。自律と責任が求められるので。もしも新入社員の子が「何時に来てもいいよ、どこで仕事してもいいよ」と言われたら困ってしまうのと一緒。「朝10時に来て仕事しなさい」と言われる方が楽なんです。TABIPPOのメンバーは、それぞれの夢や自己実現のために自由を追求しながら、その大変さと戦っている感じですね。
新卒は会社の文化を作っていく存在なので、とても大事だと思っています。ただ僕は、世の中の新卒採用のやり方に対してずっと懐疑的でした。そもそも新卒一括採用をやっているのは日本だけですし、別に決まった時期に行う必要もないですよね。世の中に対してアンチテーゼを投げかける意味でも、TABIPPOらしい独自の採用を始めることにしたんです。
まず、世界一周をしている、あるいは入社までにすることを必須条件にしました。面接では、履歴書ではなくパスポートを持ってきてもらいます。TABIPPOは旅を広める会社ですし、僕も含め多くのメンバーが世界一周を経験しているので、やはり旅が大好きな人に入社して欲しいなと思っています。
あと、1次選考を飲み会にしました(笑)。書類だけ見ても、その人の個性や人柄って分からないじゃないですか。それが一番出るのって、飲み会だと思っているんです。
だいぶ変わった選考方法なので、5人とか10人ぐらい来てくれたら万々歳だと思っていたんですが、最終的には170人ぐらいの応募をいただいて。SNSでもすごく話題になりましたね。
「新卒採用」とは言っているものの、学生である必要もないですし、年齢も問いません。面接をした中で、最高齢は67歳の方でした。
TABIPPOの場合は、イベントスペース兼オフィスという意味合いが強いのかもしれません。通常業務に限って言えば、時間や場所を問わずにできるものが多いので、メンバーには必ずしもオフィスで働かなくても良いと言ってあるんです。それでも、常時誰かしらはオフィスに来てますね。世の中一般だとオフィスって「来なくてはいけない場所」という感覚が強いと思うんですが、TABIPPOのオフィスは「来たら楽しい場所」でありたいなと思っています。
僕なんかは年間の3分の2ぐらい地方に行っているので、オフィスに来る日はすごく楽しいんですよ。久々に会うメンバーと、Face to Faceで会話できるのも嬉しいですね。メンバーが時間や場所に縛られることなく働けることを第一に考えつつも、今後もオフィスは1つの選択肢として持ち続けたいと思っています。
最近は働き方改革が流行っていますが、やり方を間違えれば価値観の押し付けにしかならないと思っています。誰彼かまわず残業しちゃダメというのはナンセンスで、したい人はすればいい。各々の理想を実現できる働き方こそが大事だと思うんです。
オフィスも同様に、「各々の理想を実現する」ことに紐付いているべきですね。先ほどお話したように、来る来ないを選択するのも個人の自由ですし、例えば夜7時以降は締め出されてしまうようなオフィスにはしたくないです。ある意味これも、世間一般へのアンチテーゼなのかもしれません。今後もTABIPPOらしいやり方で、メンバーにとって「来たら楽しい場所」かつ「快適な空間」を追求していきたいなと思っています。
(photo/text:五月女菜穂)
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