HOME > officee magazine > 編集部コラム > オフィス移転遍歴から見る株式会社サイバーエージェントの歴史とは
日本国内で最も普及しているブログサービス『Ameba』をはじめ、オンラインゲームや動画コンテンツ配信サービスなど、様々な領域で事業を展開している株式会社サイバーエージェント。連結売上高は3,000億円を超え、業界を席巻する存在となりました。近年では注力しているメディア事業『AbemaTV』に50億円の投資をするなど、大胆な経営戦略が話題を呼んでいます。
ITベンチャー企業の代表格として名を馳せるまで、どのような軌跡を辿ってきたのでしょうか。オフィスの変遷にフォーカスしながら、その歴史に迫ります。(公開日:2017/03/28・最終更新日:2018/04/18)
サイバーエージェントの創業者・藤田晋氏は、1997年に当時まだ無名であった株式会社インテリジェンスに新卒入社。翌1998年に退職し、古巣からの出資を受けて株式会社サイバーエージェントを設立します。記念すべき第一号のオフィスは、明治通り沿いにある落合原宿ビルでした。
創業当時はアルバイトを含めわずか3名しかおらず、資金も限られていたため、マンションの一室からスタートするという選択肢もあったそうです。それでも高い家賃を払ってこの落合原宿ビルを借りたのは、若者に人気のエリアで優秀な人材を採用するため。その強い意思通り、設立1年目からなんと10名近い新卒社員を採用しています。8月には堀江貴文氏との協業でクリック保証型のバナーシステム『サイバークリック』を立ち上げ、インターネット広告業界に進出。従業員数も増え、がらんとしていた20坪強のオフィスは、あっという間に手狭になってしまいました。
急激な人員増加により、設立から1年ほどで株式会社サイバーエージェントはオフィスを移転することに。藤田氏によれば、次のオフィス選びでこだわったのは「営業会社なので出入りに便利なように駅から近いこと」「まだ立ち上げなので一体感が出るように1フロアの広いオフィス」「若者受けするように原宿・渋谷・表参道周辺で」という3点。これらの条件をクリアしたのが、表参道駅のすぐ目の前にある入来ビルでした。
移転前のオフィスに比べて、広さは3倍!設立2年目とまだまだ駆け出しのベンチャー企業にとっては、かなりチャレンジングな選択であったと言えます。事業は拡大の一途を辿り、1999年12月には日経ベンチャーが選ぶ「ベンチャーオブザイヤー」の未公開部門で第2位を受賞。インターネット広告以外の新規事業を次々と生み出し、爆発的なスピードで成長を続けていきます。
2000年3月、株式会社サイバーエージェントは東京証券取引所マザーズに上場(藤田氏は当時史上最年少)。勢いそのままに、同年4月には新築の渋谷マークシティに本社を移転します。当時の従業員数は100名ほどでしたが、いきなり1フロア700坪を賃貸。1990年代後半から盛り上がりを見せていたビットバレーの波に乗り、事業を拡大し続けました。従業員数が400名を超える頃までは、1フロアのみで稼働していたそうです。2004年にはブログサービス『アメーバブログ(現Ameba)』を開始。その後のITバブル崩壊にも屈さず、2014年には上場市場を東証第一部に変更し、名実共に日本を代表する企業へと成長を遂げました。
ここまで株式会社サイバーエージェントのオフィス遍歴を振り返ってきましたが、いずれの移転においても共通しているのは、人員増加を見越した大胆な物件選び。たった2年間で、落合原宿ビル(家賃約40万)→ 入来ビル(家賃約200万円)→ 渋谷マークシティ(家賃約1500万円) (参考リンク)と、拡張移転を繰り返したのです。設立したてのベンチャーにとってこのようなリスクをとるのは、一見無謀なようにも思えます。
しかし、株式会社サイバーエージェントのオフィス移転は、経営戦略そのものでもありました。藤田氏の言葉を借りれば、「見栄を張りたかった訳ではなく、急速にそれにふさわしい会社になるまでの時間稼ぎをした」ということ。移転先のオフィスに見合うよう、圧倒的スピードで事業を拡大し、従業員数を増やしながら会社を大きく育てあげてきたのです。
株式会社サイバーエージェントは本社の渋谷マークシティ以外にも複数のオフィスを賃貸しています。公式サイトによれば、秋葉原にある1棟を除いてすべて渋谷駅が最寄りの物件です。
また、公式サイトには記載されていないものの、他にも複数のビルにオフィスを構えています。2012年に新築の住友不動産渋谷ガーデンタワーに入居し、南平台エリアへと拠点を拡大。2016年には神宮前のビル1棟を賃貸し、新たなクリエイティブオフィスとして「Chateau Ameba(シャトーアメーバ)」を開設しました。
既に退去済みの物件も含め、株式会社サイバーエージェントにゆかりのあるビルをいくつかご紹介しましょう。
ほとんどの拠点が渋谷に集中しているのは、福利厚生制度の1つである「2駅ルール」が大きく影響しているそうです。この制度は、勤務しているオフィスの最寄駅から各線2駅圏内に住んでいる正社員に対して、月3万円の補助が出る、というもの。優秀な人材を採用するという戦略に加えて、従業員の居住エリアが渋谷近辺に集中していることから、今後も渋谷に根を下ろして事業を展開していくことでしょう。いつかは自社ビルを建てたい、という藤田氏の願望もあるようですが、今後のオフィス戦略から目が離せません。
今回ご紹介した東京オフィス以外にも、国内では名古屋・大阪・福岡に、海外ではベトナム・台湾・シンガポールなど10ヵ国に展開している株式会社サイバーエージェント。グループ連結の従業員数が4,000名を超えた今もなお、ベンチャー企業らしさを失うことなく、様々な挑戦を続けています。20坪のオフィスからはじまった小さな会社の快進撃は、これからも数多の企業に希望を与えていくことでしょう。
(2018/04/18 追記)
サイバーエージェントは、現在10箇所に分散する東京・渋谷のオフィスを、2019年に2箇所のビルへ集約することを発表しました。東京都渋谷区宇田川町に竣工予定の複合ビル「Abema Towers(読み:アベマタワーズ)」にメディア事業、ゲーム事業、本社機能が入居し、東京都渋谷区渋谷に竣工予定の「渋谷スクランブルスクエア」に広告事業が入居する予定です。
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