HOME > officee magazine > 編集部コラム > オフィス移転遍歴から見る株式会社SmartHRの歴史とは
「社会の非合理を、ハックする。」を理念に掲げ、国内シェアNo.1のクラウド人事労務ソフト『SmartHR』を運営する株式会社SmartHR。サービスリリース後から数年で急激に事業を伸ばし、2019年7月には約61.5億円の大型資金調達を行うなど、大きな注目を集める成長ベンチャーです。
2013年の創業以来、同社がどんなオフィス遍歴をたどってきたのか、その歴史を振り返ってみましょう。(公開日:2021/03/23)
もともとウェブディレクターとしてIT企業を転々としていた宮田氏は、自身が難病を患ったことをきっかけに、当時勤めていた会社を休職。リハビリを経て病気が完治した後、そこから一念発起し、「人生何が起こるかわからない、好きなことをやろう」と起業を決意します。
2013年1月に、株式会社KUFU(現:株式会社SmartHR)を設立。渋谷の桜丘にあるワンルームマンションを借りました。
ちなみに、社名のKUFUは「創意工夫の “工夫(KUFU)” 」が由来とされていますが、実はヒップホップグループ・ライムスターの「K.U.F.U」という曲から来ているのだそうです。
こうして会社を立ち上げたものの、明確な事業アイデアもなく、受託開発をしながら仲間を募る日々が続きます。新規事業を起こしても上手くいかず、キャッシュアウトを回避するため受託業務でなんとか食いつなごうとすると、今度は本業にまったく専念できない、という負のループ。世の中の課題をなかなか見つけられないまま、12回もの事業転換を繰り返し、2年の時が流れていきました。
そんななか、ふと着想を得たのが、社会保険・雇用保険の手続きを自動化するクラウド型ソフトウェア『SmartHR』。きっかけは、宮田氏の奥さんが産休のために必要書類を自分で用意しなくてはならず、不便さを感じていたことでした。また、宮田氏自身が過去に難病で苦しんでいた際に、社会保険制度を利用して助かったという体験も重なり、新規事業としてスタートすることを決意します。
今度こそ失敗しないようにとサービス開発前に入念なユーザーヒアリングを行い、ニーズを確信。クローズドβ版の段階で、すでに約200社が利用するまでになっていました。
こうして、2015年11月に『SmartHR』を正式リリース。ここから怒涛の急成長が始まります。
サービス拡大を見据えて人を増やすべく、2015年12月、同社は渋谷から麻布台にオフィスを移転します。当時はまだ3名しかいませんでしたが、約30坪の部屋を賃貸。この物件もオフィスビルではなく、マンションの一室でした。(現在は取り壊し済み)
はじめての移転でこだわったのは、「低コスト」であること。前テナントの居抜きでオフィス家具や内装をそのまま引き継ぎ、移転にかかる費用を大幅に圧縮したそうです。
当初はリファラル採用のみで人を増やしていた同社ですが、それだと頭打ちになると考えていた宮田氏。先輩経営者や知人の人事担当者から「ミッションやバリューを作らないと人は寄ってこない」と言われ、早い段階でミッションやバリューを決め、コーポレートサイトに掲載していました。組織が大きくなりはじめる前から、すでに採用に関してぶれない軸を持っていたことが伺えます。
同社は、TechCrunch Tokyo 2015 スタートアップバトル、IVS(Infinity Ventures Summit)2016、B Dash Camp 2016で優勝し、さらには、HRアワード 2016 最優秀賞、グッドデザイン賞 2016、東洋経済すごいベンチャー100にも選出されるなど、業界内で話題を集めます。
そして、2016年8月には総額約5億円の資金調達を実施しました。
入居から1年3ヶ月が経った頃、手狭になったオフィスを移転します。3名で使いはじめたオフィスには、既に20名弱のメンバーが入っていました。
2017年3月、同社ははじめてオフィスビルに拠点を構えました。原宿OMビルで借りた広さは、前オフィスの倍となる60坪弱。北参道駅から徒歩5分ほどの場所で、住宅の多い閑静なエリアです。
前回のオフィス移転では居抜き物件を選んだ同社ですが、2度目のオフィス移転でははじめて内装を作り込み、バーカウンターやリラックススペースなども設けたそうです。
また、前オフィスではついたてのような仕切り壁があり、コミュニケーションの問題が起こり始めたため、原宿OMビルでは壁を造作しなかったとのこと。
そして移転直後の2017年4月には、社名をKUFUからSmartHRに変更します。
『SmartHR』の利用企業は増え続け、リリースから1年半後の2017年6月には5,000社を突破。インターネット広告だけではリーチできない層まで認知を拡大すべく、2017年8月にはテレビCMの放送を開始しました。
従業員が40名以上になり、入居からわずか9ヶ月というタイミングで移転をすることになります。
あわせて読みたい:【SmartHR】情報も空間もオープンだからこそクリエイティビティを発揮できる――代表取締役 宮田昇始氏インタビュー
次に同社が入居したのは、半蔵門にある新築(当時)のオフィスビル、PMO半蔵門。広さは170坪で、中規模ながらも大型物件と同等のスペックを有するハイグレード仕様が魅力です。
情報をオープンにするという社風を体現するため、オフィスの会議室は全面ガラス張りで、「経営会議をする際にも扉を閉めない」という斬新なルールをつくっていました。
移転とほぼ同時期に15億円の資金調達をし、2018年2月には『SmartHR』の利用企業が1万社を突破します。
同社はこの間もずっと採用に力を入れており、2018年8月に宮田氏がブログで採用面接用の資料を公開したところ、応募数は5.3倍に増加したそうです。
入居から1年3ヶ月が過ぎる頃には、従業員数が100名を超え、想定よりも早く移転することになりました。
2019年4月、同社は住友不動産六本木グランドタワーに移転しました。六本木一丁目駅直結、地上43階建てという、まさに大型ハイグレードビルです。広さは170坪から650坪になり、3倍以上の拡張移転でした。
2つ目の拠点を構えた麻布台のマンションからも近い立地で、原点回帰のような気持ちもあったのかもしれません。
2019年7月には約61.5億円の大型資金調達をし、その大半を人件費・採用費とマーケティング費用に投資すると発表しました。2021年3月現在では、従業員数は400名弱となっています。同社の近年の成長ぶりは言わずもがな、といったところでしょう。
また、より広くサービス提供をすべく、2019年7月に関西支社、2020年10月に九州支社、2020年12月に東海支社を開設するなど、全国各地にも拠点を増やしています。
そして、2021年1月には、東京オフィスの館内移転を発表。39階の分割区画から17階へと移ることで、ビルの1フロアを丸々賃貸し、広さは約1,000坪にまで拡張します。このオフィスでは最大500名ほどが勤務できるとのことで、これからも増員を続けていくようです。
コロナ禍でリモートワークを取り入れた同社ですが、オフィスに集うことの意味をしっかり考え、リアルでのコミュニケーションを重視していることが伺えます。新しいワークスタイルについては、「リモートワーク環境を整える手当」を導入したり、フレックスタイム制のコアタイムを廃止するなど、制度面の見直しも積極的に実施しています。
コロナ終息後は、ある程度リモートを活用しながら新しい働き方を模索していくそうです。今後同社がどのようにオフィスを運用し、成長を続けていくのか、非常に楽しみです。
(text:澤木香織)
渋谷サニーヒル
住所 渋谷区桜丘町14-5
最寄り駅 渋谷駅 徒歩4分
竣工 1976年
住友不動産六本木グランドタワー
住所 港区六本木3-2-1
最寄り駅 六本木一丁目駅 直結 / 六本木駅 徒歩5分
竣工 2016年
基準階坪数 1020坪
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