HOME > officee magazine > ワークスタイル > 【SmartHR】情報も空間もオープンだからこそクリエイティビティを発揮できる――代表取締役 宮田昇始氏インタビュー
「テクノロジーと創意工夫で社会構造をハックする」というビジョンで急成長を遂げている株式会社SmartHR。人事労務業務のあり方に大きな変革をもたらしている『SmartHR』というサービスは、どんなオフィス環境から生まれたのでしょうか。代表取締役である宮田昇始氏にインタビューを行いました。(公開日:2017/04/04)
企業の人事労務担当の方にご利用いただいている、クラウド労務ソフトです。従業員を雇用する際、社会保険や雇用保険の手続きが必ず発生します。このペーパーワークは、煩雑で時間のかかる作業。これをシンプルかつ簡単に行うことを可能にしたのがSmartHRです。書類作成を自動化し、役所への届け出もオンラインで完結できるようにしました。
こうした手続き業務は重要ですが、正確に情報を記入するルーティン作業で、付加価値が出にくい分野。小規模企業の場合、経営者が行っているケースもあります。その時間を削減できれば、経営者は経営に、人事担当者も人事制度の策定や採用などより付加価値のある仕事に集中できるようになります。
僕たちは、もともと最先端のテクノロジーで尖ったことをやるというより、使うテクノロジーは最先端でなくてもいいので、世の中で“負”が大きいジャンルを現代の当たり前のレベルに引き上げたいという想いでプロダクトを開発しています。
僕自身は、付加価値の出にくい仕事はどんどん機械にまかせればよいと思っています。今後40年間で労働力人口は約4割減少すると言われていますが、そうなると、企業は優秀な人材のとりあいになり、人事の職務はより重要になります。そういう意味でも、単純なペーパーワークではなく、もっと付加価値の高い仕事に取り組める時間をつくることが大切だと思います。
すべての情報をオープンにしています。経営会議やベンチャーキャピタルとの打ち合わせの議事録、営業担当の訪問の報告、それに銀行口座の残高まで、社員の誰でもが見られるようになっています。
全員が「自律的」に考え動ける組織にしたいという考えからです。これは先輩経営者からの受け売りなのですが、会社を上場させるというのは、難しい問題を100問解くようなものだと思っています。「ターゲットは誰?」「サービスは何?」とか。それを社長ひとりで解こうとすると時間もかかるし、回答の精度も下がる。でも30人で解けばスピードも速いし、トライアンドエラーが増える分だけ精度も上がる。
でも、それをいきなり実践するのは難しいから、情報をオープンにして社員が自発的に課題を見つけて取り組みやすい環境をつくっています。他にもメリットをいえば、意思決定のプロセスまで公開されているので社員への説明コストが下がったり、一般的にどの企業も権限委譲がやりにくいと言いますが、この環境だと容易ですね。
以前のオフィスは、空間自体はつながっていたのですが、ついたてのような仕切り壁があったんです。最初、その壁の一方に机を並べていたのですが、人が増えて反対側にも席をつくると、コミュニケーションの問題が起こり始めました。壁のこちら側では当たり前のことが、あちら側には伝わっていないということが増えたんですね。ちょっとした壁1枚で、こんなに会話って届かないんだと驚きました。
だから、新しいオフィスは思い切って全部壁をとりはらいました。ちなみに情報をオープンにするという視点から会議室にも壁はありません。
以前は居抜きのオフィスで、もともとバーカウンターがあったんです。日中のコーヒータイムや、残業して遅い時間になると、自然に人が集まって、飲みながら会話が始まる。それがよかったなと思って今回もバーカウンターをつくりました。だから、うちはかなりの頻度でオフィスでの飲み会があります(笑)。週1回、全員でランチも食べますし、コミュニケーションをとる機会はとても多いですね。
僕自身は、リモートワークには否定的なんです。台風の日などはもちろんリモートワークOKですが、逆に平常時は必ずオフィスに集まるようにしています。リモートワークは決まった作業をやるには問題ないですが、僕たちは世にないものをつくるというクリエイティブな仕事が多いので、リモートワークは向かないと思っています。
たとえば、SmartHRの価値観に「最善のプランCを見つける」というのがあります。アイデアを考える場合、簡単にできるけれどメンテナンス性が悪いプランA、時間がかかるけれど、メンテナンスしやすいプランBが出た。さて、どうしようか……となったときに、リモートワーク環境だとそれ以上のアイデアは出にくいと思うんです。でも、顔を合わせて対話していれば「その発想なかったね」という「プランC」が出てきやすい。つまりクリエイティビティを発揮しやすいんですね。
コミュニケーションコストもリモートワークだと高くなってしまう。僕たちは小さい会社なのでスピードが重要です。何かひとつ説明するにしても、その場に全員がいれば簡単ですが、リモートワークだと時間もかかってしまう。
それに、オフィスにいると日常的な会話から自然に情報がインプットされます。営業やサポートチームが近くで電話している、その話を聞くこと自体が参考になる。それは、やはりオフィスで一緒にいるから。だからこそ、よりクリエイティブな仕事ができると思っています。
また、みんなが会社に揃って、文化祭の一週間前のような空気の中で、一緒にひとつのものに向かっていくのが単純に楽しいと思っています。それが理想の働き方です。
(書き手:新川 五月)
全ての情報をオープンに、という考え方がとても印象に残っています。宮田さまがさらっと「社員全員が同じ情報量を持つようにしている」と仰っていましたが、恐らく、なかなか簡単には出来ないことだと思います。それを実際に行っているということが、本当にすごいことだと感じました!移転された新しいオフィスは大きな窓面から西日が差し込んでおり、柱も壁もないオープンな空間が、考え方にも合っていると感じられる魅力的なオフィスでした。
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