
【スクー】個人と組織を変革するインターネット学習の未来――代表・森 健志郎氏インタビュー
26万人以上のユーザーが集まるオンライン動画学習サービス『Schoo』。生放送というスキームを使い、これまでにない学習体験を提供する株式会社スクーは、「インターネット学習で人類を変革する」というビジョンを掲げています。
そして「学ぶことで他人への尊重が生まれる」と語るのは、同社代表取締役社長の森 健志郎氏。学習は世の中・会社組織にどんな変化をもたらすのか、森氏にインタビューを行いました。(公開日:2017/04/11)
「10年後にどうありたいか」学習者は人生を逆算で考えるようになる

── 仕事と学習を両立するのは時間がなくて難しい、と悩む社会人は多いと思うのですが、「社会人学習」における課題感をどうお考えですか?
社会人の学習において「時間がない」というのは表層の話であって、本質的な課題は「労力対効果が見えないこと」だと思います。
たとえば50時間のプログラムを受講し終わった後に、年収にどう反映されるのか、生活がどう変わるのか、といったことが定量化できていないわけです。しかし50時間勉強したら年収が200万円あがります、といった定量データを出せれば、単純にモチベーションがあがるじゃないですか。
そしてもう1つの課題は、単純に「学習が面白くない」ということ。毎日青汁を飲もうとがんばっても飲めないのと一緒です。
この2つの課題に対しての解決策としてSchooがあると思っています。まず前者の課題に対しては、「学習ログ」と「就労データ」を結合させることで定量化を目指しています。Schooはインターネット学習に特化していますので、アナログの学習では取得できない学習データの蓄積を実現できているのです。
後者の課題に対しては、「生放送」というスキームを使って解決策を提供したいと思っています。具体的には、Schooでは授業中になにか投げかけたら返答がきたり、他人のコメントを見て他の人がどんなことを考えているのかを知ることができたり、一方的に授業を聞いているだけでなく、コミュニケーションができるんですね。
このように動的であることが楽しい学習体験になるポイントだと考えていますし、受講することがツラいことではなく、楽しい体験になればいいなと。
── 「世の中から卒業をなくす」というミッションをお持ちですが、学習によって社会人の “働き方” はどう変わると思いますか?
自分の人生を順算ではなく、逆算で考えられるようになる、と思っています。基本的に人って、いまの1を2にすることを考えていると思うんですけど、学習癖がある人は「10年後こうなりたいから、いまこれを学ぼう。これをやろう」という考え方になってくるんですよね。
一方で、大きな視点でいえばいまは資本主義の流れにいるので、学習による働き方の変化は、微調整の範囲内かなとは思ってます。ただし、世界のイノベーションって教育のイノベーションとリンクしていることが多いんです。
なのでSchooが学習のデータを溜めていくことで、革命の一翼を担えるようになったらいいなと思っています。最近はEdTech(Education×Technology)が流行っていますが、これがムーブメントで終わるのか、イノベーションになるのかを見届けたいですね。
学ぶことで他人への尊重が生まれる──相互理解が深まる組織のあり方

── スクー社内の学習制度はなにかありますか?
自分たちもSchooを使って学習をしていますね。ただ「全社として何かやる」というのが僕自身嫌いですし、机に張り付くだけが学習だと思っていないので、持ち回りで今月学んだことを朝会で発表するなど、インプットよりもアウトプットの場を設けるようにしています。
またスクー社内では「誰よりも学習して、尊重して、変化しましょう」という行動指針があるのですが、たとえば僕が専門外のデザインを学ぶことで「デザイナーはこんな難しいことやってるんだ!」と気づき、デザイナーを尊重できるんですよね。お互いの職種を表層的に捉えるのではなく、学習して理解することで尊重が生まれる、というのを大切にしています。
── メンバー間の交流のために、“飲みニケーション” のようなものも大切にされているのでしょうか?
実はみんなで飲みに行こうというのもなくて。サバサバしている人たちが多いのかな(笑)。ただ、強いチームって必ずしもプライベートで仲が良いわけではないと思っていて。プロフェッショナル同士のチームって表層的な仲の良さが大切なのではなく、深いところで理解し合える組織であると考えています。
そのためには、やはり前提として相互理解のための「学習」が必要。メンバー各々が学ぶことで、社内の人間関係は良くなっていくと思います。
「ひとつひとつ考えて行動すること」トライの量がイノベーションの量を変える

── 貴社のオフィス設計でこだわっていることはありますか?
オフィスの内装決めって、楽しいじゃないですか。そういった「楽しい仕事」はメンバーにやらせてあげたいと思っていて。なので僕は内装決めに関わっていないんですよ。オフィスの内装はメンバーが全部決めています。
ただ座席の配置は僕が結構決めていて、週1とかで席替えをしています。座席は組織のフォーメーションだと思っていて。別々のチームを近くに配置してみたり、僕の目の前にある席のメンバーを変えてみたりすることで、経営陣のメッセージを伝えやすくなったり、会社全体の組織づくりに関係してくるんですよね。だからオフィスというのは戦略、戦術の選択肢を増やすものだと思っています。
── 今後スクーではどういった展開を予定されていますか?
実は昨年、スクーのビジョンを「インターネット学習で人類を変革する」というものに変えました。そして事業ドメインを学習だけでなく、学習を基軸とした適正分析事業や、HR事業にも広げていきます。
というのも、「人」っていろんなシーンで変わるじゃないですか。住む場所、旅行先、付き合う人など、いろいろな要素で人生の転換期を迎えたりするんですよね。学習というのはものすごくブラックボックスで、仕事のなかでも学びはあるし、人との会話で学ぶこともある。外をぼーっと眺めているだけで、なにか気づきがあるかもしれない。
本を読んでいなくても、頭のいい人はいますよね。もしかしたら本を読むことが学びに繋がるというのは神話かもしれないわけです。
だからこそ、スクーではブラックボックスである「学習」のデータをもっと収集・分析していき、それぞれの人にふさわしい学習をマッチングすることで適正分析事業や、HR事業に展開していく予定です。
── 最後に、人や組織が「変革」する上で大切だと思うことを教えてください。
「考えることで個性をつくる」というのが大切だなと思います。たとえば「人が足りないね、じゃあ人材エージェントさんに頼んで採用しようか」といったように考えずに行動するのが僕は嫌いで。
名刺の渡し方、電話の取り方といったひとつひとつの所作をちゃんと考えて行動すること。そうすることで他者との差別化ができるんです。会社もビジネスモデル云々ではなく、考えることをサボらなければ、他の会社と同質化することはないと思っていて。他と同じになるときって、考える総量が足りないだけなんですよね。
自ら考えて試してみる。そういったトライの量がイノベーションの量を変えるので、日本全体でトライの数が増えてくるといいなと思っています。
(書き手:永田 優介)

取材を終えて

編集担当:澤木
毎日顔を合わせていても、その人が普段どんな仕事をしているのか分からない。人が増えてくると、そんなことがよく起こります。今回スクーさんのお話を伺うなかで印象的だったのは、相互理解のための学習が組織を強くする、ということ。業務が違うから、部署が違うから、と色々なものを諦めてしまっては意味がありません。同じオフィスに集まっているからこそ、目の前にいる人を一生懸命理解したり、その人と一緒に何ができるのかを考え続けることが大事だな、と感じました。










