HOME > officee magazine > ワークスタイル > 【キャディ】事業・組織づくりで目指す“ポテンシャルの解放”。社内外のコミュニケーションを最大化し、急成長を支えるオフィス
「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」というミッションを掲げ、100年以上変わらない製造業の調達分野にメスを入れるキャディ株式会社。発注元であるメーカーの図面データを解析し、必要な部品の見積りをわずか7秒で提供する受発注プラットフォーム『CADDi』を開発・運営しています。
驚異的なスピードで成長を続ける同社が事業を展開する上で大切にしているのは、弱い立場に置かれがちな町工場が持つ「モノづくりの技術」をリスペクトし、彼らが抱える課題に寄り添う姿勢。それは、同社のオフィスづくりにも表れているそうです。
代表取締役の加藤勇志郎さんに、パートナー工場やお客様への想い、そして社内外のコミュニケーション活性を意識した新オフィスについて、お話を伺いました。(公開日:2019/09/09)
社員数が増えて、以前のオフィスでは手狭になってしまったことが移転の理由です。現在の従業員数は56名(2019年8月時点)ですが、2020年3月には約100名に、そして2020年末には約200名に増やすことを見据えているんです。
今回の移転で東京オフィスは約6倍に拡張したので、先2年くらいはここを拠点にできると考えています。同じタイミングで、関西オフィスも拡張移転しました。
キャディは2017年11月に創業し、その頃から東京と関西にオフィスを構えているのですが、最初はどちらもマンションの一室でしたね。東京本社は、2018年4月頃に御徒町から浅草へ移転。このときも、古い倉庫を改装して使っていました。トイレは男女兼用で1つだけしかなく、しかもそのドアは僕が塗装したんですよ(笑)。
渋谷や六本木のように華やかな街ではなく、静かで落ち着いた場所で働きたいという好みの問題もありますが‥‥下町に町工場がたくさんある、というのが最大の理由ですね。普段からパートナー工場の方々と直接会うことを大切にしているので、立地は譲れないポイントなんです。
これまでにない新しい事業を始めるとき、そしてその事業を成長させたいとき、まずはお客様や関係者の方々がどんな課題を抱えているかを把握する必要がありますよね。それも、自分たちの事業に関係のないことも含めて、“相手を深く知ること”が求められます。
でも、会社の事情なんて相当親しくならないと教えてもらえない。踏み入った話までしてもらえる仲になるには、やっぱり会うことが一番いい方法だと思うんです。
今日までそう信じて何度も相手の元に足を運んできたからこそ、当社は今、町工場からさまざまな課題についてヒアリングすることができています。今後もこのスタイルは変えずに、業界の課題を的確に解決できるサービスをつくっていきたいですね。
そうですね。みなさんが来社された際、当社に対して期待感と信頼感をもってもらえたらと思い、“モノづくりのダイナミズムとトラストの融合”というコンセプトでオフィスをつくりました。
もう少し詳しくいうと、僕たちがスピーディーかつ柔軟に成長している一方で、周りの方やモノづくりの技術を尊重しながら地に足をつけて事業を展開していることをアピールしたい、と思ったんです。
例えば、勢いよくダイナミックに成長していくイメージを表すヘキサゴンモチーフを、さまざまな場所にあしらいました。
あとは、パンチング加工を施した素材をパーテーションに用いてオフィス全体に“透明感”を演出し、信頼感を表現しています。
それから会議室のドアのデザインには、モノづくりへの想いを込めました。ドアの右上に板金を使って、下にはその規格を表す数字をふったんです。
「304」「400」「5052」といった感じでバラバラなので、ほとんどの方にはまるで暗号のように見えると思うのですが、パートナー工場の方はすぐにピンと来ていたりして(笑)。ちょっとした工夫がコミュニケーションのきっかけにもなっています。
あとは、2階にある1on1ミーティングルームの名前も変わっているんですよ。各部屋にキャディの「C・A・D・D・i」を頭文字にする加工技術の名称をつけています。例えばCの部屋は、チャンファリング(chamfering)。製品の角を落としてなめらかに仕上げる“面取り”の技術です。
部屋の名前にピックアップした加工技術は、実はどれもちょっと地味なものなんですね。当社が目指すのは、いわゆる下請けと呼ばれる町工場や、強みを最大限に活かせていない企業のポテンシャルを、テクノロジーの力で解放すること。そんな“縁の下の力持ち”的な存在を大切にしたいという想いを込めて、あまり目立たないけれど重要な加工技術を選びました。
執務室の壁の大部分に、ホワイトボードを設置しました。今の人数だと、一人あたり一面以上ある計算になるんじゃないかな(笑)。打ち合わせの内容やアイデアをメモしたり、チームの目標を書いたりして使っています。
ホワイトボードがあると議論を進めやすいだけでなく、記録が残るというメリットもあって。後から別の誰かが見ても、どんな話をしていたかが大体わかるじゃないですか。全面ホワイトボードにしてもよかったかなと思うくらい、導入効果が大きかったですね。
あとは、先ほどちょっとお話しした1on1ミーティングルームをつくったのも、今回のオフィス移転におけるこだわりのポイントです。当社では1on1ミーティングを重視していて、毎月1回、上長とバディ(直属の上司ではない先輩社員)と面談する機会を設けているんですね。前のオフィスではスペースの問題で思うようにできなかったので、縦のラインのコミュニケーションがより活発になってよかったと思っています。
それから、2階には100名以上を収容できる広いイベントスペースも用意しました。
外部の方を招いた勉強会などのイベントも頻繁に開催していますが、メインは毎週1回行っている全社ミーティングに使っています。関西オフィスとはビデオ会議をつないで、基本的には社内の全員が参加。事業戦略やその時々のトピックスなどを共有しています。
キャディの特徴は、社員一人ひとりの裁量が大きいこと。個人が自立して働き、スピーディーに意思決定や行動ができる組織を目指しています。とはいえ、会社の目指す方向とズレてしまっては意味がありませんから、全員が方針をきちんと理解する必要がある。全社ミーティングはそのために頻繁に行っているんです。
はい。あとは「COP(キャディ・オンボーディング・プログラム)」の取り組みとして、新入社員が全社員に向けて5分ほどの自己紹介をする時間も、全社ミーティングのなかに確保しています。毎月新しい社員が数名入社しているのですが、人数が多くなってもできるだけお互いの顔が見える組織でありたいと思っているので。
部署をまたいでの「シャッフルランチ」や、家族に職場を見学してもらう「ファミリーデー」などがありますね。前回のファミリーデーには、デザイナーの社員が中学2年生の息子さんを連れてきてくれて。「キャディなら入社してもいいよ」と認めていただきました(笑)。
あとは、社員が実際に町工場を見学して、名刺入れなどのグッズを自分の手でつくる「モノづくり体験」も行っています。現場を知ったり、パートナー企業の方とコミュニケーションをとることは非常に重要なので、新入社員は全員に参加してもらっているんです。もちろん、キャリアや部署を問わず何度も参加することができます。
社員の意見を吸い上げながら、柔軟な働き方ができるようにしたり、スキルアップを支援したり、育児・介護をサポートしたりと、合計34の項目を用意しました。社外の方からも「働きやすい環境を整えているんだね」とお褒めの言葉をいただくことは多いです。
でも、こうした取り組みの目的は、福利厚生を充実させて採用力を高めることではありません。あくまで、キャディの使命である課題解決に向かう社員にとって、障害になることを取り除くためなんです。
そうですね。社員のポテンシャルを解放することが、ミッションの達成につながると考えています。だから、「福利厚生がいいからキャディに入社したい」という方は、申し訳ないのですがお断りしているんです。僕たちが求めているのは、課題解決にチャレンジしたい人ですから。
オフィスに関しても考え方は同じで、今回の移転で採用力を向上する狙いはありませんでした。あくまで、パートナー企業やお客様をはじめとした関係者の方々や、課題にチャレンジしている現社員のことだけを考えてつくっています。結果的に採用力は上がったと思いますが、極端に言えば僕は以前のオフィスでも応募してくれる、つまり当社のミッションに共感してくれる方と働きたいですね。
まずは2021年末までに、モノづくりの受発注領域で『CADDi』をアジア最大のプラットフォームにすることを目指しています。これを実現するためには、グローバル展開が必須。そのため、近い将来に海外にもオフィスを構える計画です。
もちろん、日本国内も東京・大阪に続いて名古屋、九州や東北など、全国に拠点を増やしていきたいですね。広域で事業展開していくなかでも、やはりパートナー企業さんと直接会うことを大切にしたいと思っているので。
これからも“キャディらしさ”を忘れずに、モノづくりのポテンシャルを解放するため、どんどん新しいチャレンジができればと思います。
(photo:森田剛史/text:中島香菜)
キャディ株式会社
入居物件 ザ・パークレックス蔵前
所在地 東京都台東区蔵前1-4-1
移転規模 約300坪
移転時期 2019年7月
利用人数 56名
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