HOME > officee magazine > ワークスタイル > 【アンドワーク京都】これからの“働く”は日常に溶ける。ミレニアル世代が描き出す最先端のワークスタイルとは
(photo:服部健太郎/text:梁原・澤木)
「ホテル併設のコワーキングスペースが京都に開業」。そんな記事の見出しに興味を引かれ、コワーキングスペース「アンドワーク京都」と、ホテル「ザ・ミレニアルズ」について調べていきました。
近年、「働く場所」の流動性は高まっていく一方です。2018年にはニューヨーク発祥のコワーキングスペース「WeWork」が上陸予定と報道されています。また、スペースシェアリングサービスの普及や、リモートワークの浸透など、働き方の多様化は留まるところを知りません。
片や、「住む場所」についてはいかがでしょうか。旧来からの賃貸住宅に加え、シェアハウスなどの新しい住居形態が生まれています。日単位で利用できる「ホテル暮らし」に行き着く人も、今後ますます増えていくでしょう。
「働く場所」と「住む場所」の流動性が高まった先には、どんな暮らしが待っているのか。今と未来をどのように見据え、ホテル併設型のコワーキングスペースを作ったのか。「アンドワーク京都」を手がける株式会社グローバルエージェンツの代表取締役・山崎剛さんにお話を伺いました。(公開日:2017/09/05)
ニューヨークやポートランドで注目を集めている、ライフスタイル・ホテルという次世代のホテルに影響を受けたのが、そもそものきっかけです。
普通のシティホテルのロビーは、宿泊客がチェックイン・チェックアウトするための場所だったり、単なる待合スペースでしかないことが多いですよね。
でも、ライフスタイル・ホテルのロビーには、宿泊客に混じって地元の人がたくさんいて、ごく自然に仕事をしているんです。
最近はクリエイティブな発想を生みだすために、あえて雑音の中で仕事をするというワークスタイルが注目されています。ホテルのロビーというのは、世界中の言語や文化が交差する場所。そこで働く人にとっては、非常に刺激的な空間なんです。
一方ホテル側も、宿泊者ではない人がロビーを利用していても、追い出すことはありません。なぜなら、クリエイターやローカルな人たちがロビーで仕事している風景が、ホテル自体の価値を高めているからです。
つまり、いつの間にか両者の利害関係が一致しているんですよね。これは面白いなと。
ソーシャルアパートメント事業やホテル事業を主軸としてきた弊社ですが、以前から「働く」ということにも何かしらの形で携わることができたら、とは思っていたんです。そこで、これまでの経験や強みを活かし、日本でも同じようなサービスを提供できないかと模索しはじめました。
ただ、海外のライフスタイル・ホテルを日本でオープンするとなると、そっくりそのまま再現するわけにはいきません。なぜなら、日本人は「無料でホテルのロビーを使うこと」に対して、非常に抵抗を感じるだろうと予測されたからです。
それなら、単にホテルのロビーを開放して「ご自由にどうぞ」ではなく、ちゃんと料金設定をしてコワーキングスペースという形で提供すれば、より多くの人に気兼ねなく来てもらえるだろう。ということで、ホテルハイブリッド型コワーキングスペース 「アンドワーク京都」をつくることにしました。
ホテルは、旅行や出張などの際に宿泊目的で利用するもの。一方、コワーキングスペースはあくまで日常生活で仕事をする時に利用するものです。ホテルとコワーキングスペース、双方の需要がある場所となると、エリアはある程度絞りこまれます。
その中でも、京都の河原町三条は、ビジネスエリアからのアクセスも良く、また観光の拠点としても利用しやすい。日常と非日常が混じり合い、そして共存し得るエリアなんですね。こうした立地こそが「アンドワーク」にはふさわしいと思い、決断に至りました。
京都は、あくまで「アンドワーク」第一弾。次は2018年1月に、渋谷でのオープンを計画中です。各エリアならではの特性を活かしつつ、今後3年間で10施設を国内外に出店していきたいと考えています。
ホテルは、海外からの旅行者を含めさまざま。一方、コワーキングスペースは、比較的ローカルないしセミローカルなユーザーを想定しています。
ただ、どちらかというと地理よりも世代で切っていく考え方が近いですね。 コンセプトとしては、1980年代以降に生まれてきた「ミレニアル世代」を対象にしています。
※ミレニアル世代とは、インターネットが普及した時代に育った若者たちのこと。情報リテラシーが高く、ソーシャルメディアを中心としたコミュニケーションを得意とする。“デジタルネイティブ”として、社会のあり方を変容させるといわれている。
ミレニアル世代を語るうえで、「自由」というのは欠かせないキーワード。ワークとライフ双方において、時間や場所を制限されたくない、と考える傾向があります。
「アンドワーク」をつくるうえでも、利用者の行動を制限することなく、自由に使っていただけるように意識しました。ホテルに宿泊してコワーキングスペースを使うもよし、または宿泊だけするのもよし。コワーキングスペースだけを利用する人にとっても、ある日は仕事をするために、またある日はシャワーだけ浴びに来ることもできます。どう活用するかは、人それぞれなんですね。
また、ミレニアル世代は、非常に合理的な考え方をします。所有すべきもの、シェアすべきものをひとつずつゼロベースで考え、判断していくんです。
合理性という意味では、所有すべき場所、つまり客室についてはコンパクトにして、必要最低限の設備を整える。その分、シェアすべきもの、コワーキングスペースやバーカウンターなどの共用部を充実させました。
出張者の利用や、京都ローカルによるサテライトオフィス・ミーティング用途など、幅広くご利用いただいています。さらに最近では、世界を旅しながら仕事をするフリーランサーなどの利用もみられ、働き方におけるグローバルでの新しい潮流を感じますね。
テクノロジーの進歩によって働き方が多様化している今、ワークとライフの境目がどんどんなくなり、それぞれを切り分ける必要もなくなってきています。
PC環境さえ整っていればどこでも作業できるのに、毎日会社に通勤する必要はあるのだろうか。その移動時間って、無駄なのではないか、と。むしろ、ライフと同じ環境でワークも済ませることができれば、生産性が上がるかもしれません。
ワークとライフは、いわばオーバーラップする関係。「アンドワーク」は、こうした新しいワークスタイルを実現するための1つの方法として、色々な方に活用していただけたらと思っています。
最近ではリモートワークを取り入れる企業も増えてきましたし、社会全体の流れとして、従来のような単一的な働き方が見直されつつあると思います。
一人でこもってやるべき業務と、チームメンバーと顔を合わせてやるべき業務とでは、適切な場所や時間も変わってくるはず。今後、ハード面・ソフト面で求められるものは刻々と変化していくでしょうね。
ただ、企業にとって重要なのは、あくまで生産性をあげるための環境を整えること。本来の目的を見失わないようにしないといけません。企業風土やサービス内容によっては、必ずしもリモートワークのような新しい働き方がマッチしない場合だってありますから。
テクノロジーの進歩によって、今後も様々な働き方が可能になってくると思いますが、社員がより自分らしく、楽しく仕事ができるよう、企業側がひとつひとつ柔軟に考えていくべきだと思っています。
私たちが目指すゴールは、世の中に新しい価値を生み出し、文化を創っていくことです。「アンドワーク」は、今までにない働き方を実現していくためのプラットフォーム。働き方にとどまらず、これからも新しいライフスタイルや文化を社会にどんどん提案していきたいですね。
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