HOME > officee magazine > ワークスタイル > “ご近所さん”のような距離感で、人々が交わり合う空間を。デザインを通じて緩やかな繋がりを生むコワーキングスペース「flat5」とは
茅場町にあるコワーキングオフィス&シェアスペース「flat5」。緑あふれる居心地のいい空間が、訪れる人々の心を惹きつけています。一般的なコワーキングスペースとは違い、単なる場の提供にとどまらず、人と人との繋がりを生み出す空間作りを目指しているそうです。
flat5が持つ魅力を探るべく、運営元の株式会社asDesign共同代表の隈元瞳子さん(写真左)と後藤良子さん(写真中央)、そして実際に入居されているデザイナーの進藤琉風さん(写真右)にお話を伺いました。(公開日:2018/05/15)
隈元:flat5は、「デザイナーが集まる、緑のオフィス」というコンセプトのもと、2016年秋にオープンしたコワーキングオフィス&シェアスペースです。Story Design house株式会社(代表:隈元瞳子)および株式会社URBANWORKS(代表:後藤良子)が共同で設立した、株式会社asDesignが運営を行っています。私たち自身もこのflat5に入居しているのですが、運営側のメンバー・入居者の方という垣根を越えて、1つの空間で働く人々がデザインを通じて緩やかに繋がり、多様なフィールドで1社ではできないビジネスの可能性を育てていければと考えています。
後藤:隈元さんと私が知り合ったのが2015年頃だったのですが、隈元さんはPRの事業を、私はまちづくり・都市計画に関する事業を行っていて、出会った当時はそれぞれ別の場所にオフィスを構えていました。ある時、ひょんな雑談から「自分たちが気持ちよく働けて、かつ外部の方にも入居していただくことでビジネスに広がりを作れるような、居心地のいい空間を作りたいね」という話が持ち上がり、共同でコワーキングスペースを開設することになったんです。
そこから物件を探しつつ、徐々にイメージを具体化させていって。オープンまでに約1年かかりました。最初の頃は色々な可能性を探っていたので、廃業した町工場や倉庫なども見ましたが、こちらの物件の広さや立地、空間の雰囲気などを気に入って借りることにしました。
隈元:そうですね。東京の西側に比べると、東側はまだコワーキングスペースが少ないんです。茅場町は下町のような雰囲気が残りつつ、路線が複数あってアクセス性もいいので、選んで正解だったなと思っています。
後藤:「flat」は、海外だとアパートや宿舎みたいな意味合いで使われる単語なんです。同じ会社ではないけれど、まるでご近所さんの感覚で1つの空間にいられるような場にしたい、という思いを込めています。事業体としては別々なのだけど、隣り合う部署くらいの距離間で。「5」は、5階にあるということで後から付けたものです(笑)。語呂がよく、覚えやすい名前になったかなと思っています。
隈元:当初から、「普通のオフィスではない空間を作りたい」という思いはあって。デザインを扱う仕事では創造的な思考を巡らせる機会も多いので、リラックスできる雰囲気にしようと考え、観葉植物を多く置きました。樹の下で仕事をしているような感覚になれたら、というイメージですね。
後藤:内装設計や家具選びも、全て自分たちで行ったんです。DIYは約1ヶ月間かけて大工さんと一緒に現場で判断しながら進めました。ソファを入れたりキッチンを中央に配置したりして、よりくつろぎやすく、コミュニケーションが自然発生しやすい空間設計を意識しています。
後藤:ちなみに、家具や観葉植物は入居者の方にも一緒に選んでいただいたものもあるんです。こちらの壁にある絵も、テキスタイルデザイナーの方に描いていただきました。単なる場の提供どまりではなく、運営側・入居者の方が一体となって空間を作り上げ、愛着を持って使っているのは、flat5の特徴とも言えますね。
進藤:私は1人で会社を経営していまして、元々は別のシェアオフィスを利用したり、知人のオフィスを間借りしていました。とあるきっかけで後藤さんと知り合い、flat5がオープンしたと聞いて挨拶に来てみたら、すっかりこの雰囲気を気に入ってしまって。入居して約1年経ったのですが、非常に居心地がいいですね。
進藤:通常のシェアオフィスって、パーテーションで区切られていて、机と椅子があって、という無機質な空間が多いんです。もちろん、デザイン性の高い内装のシェアオフィスもありますが、なかなか空室が出なかったり、賃料が高かったりと敷居が高い。そんな中、flat5は私の中でとても丁度いい選択肢だったんですね。
個人的に、緑が多いのはとても嬉しいです。納期に追われている時など、ふと顔を上げると緑に囲まれていて気持ちが安らぎます。
進藤:そうですね、少しずつですが増えています。1人で会社をやっている身としては、こうした繋がりができるのは非常にありがたいですね。以前居たシェアオフィスには入居者同士のマッチングサービスがあったのですが、やはり自然な感じではなくて。flat5は「ご近所さん感覚」という言葉がぴったりで、人と人との距離が適度に近いので、偶発的なコミュニケーションが生まれるんです。おかげさまで、お仕事の発注などいただく機会も増えました。別々の会社でありながらも、一緒に働いている感覚の方が近いのかもしれません。
隈元:ランチ会を開催するなど、時々イベントを行うこともあります。とはいえ、新しい繋がりを生み出そうとして意図的に行っているのではなく、あくまでご近所さん付き合いのような感覚ですね。「ごはん作りすぎちゃったから食べませんか?」みたいな会話がごく自然と生まれています。
後藤:DIYをして家具を選んで、という段階から既にそうだったのですが、運営側と入居者の方の間に出来るだけ棲み分けを作らず、むしろ場を一緒に作る楽しさを共有している感覚が強いんです。最近は観葉植物のお手入れも一緒にやってくださったりして、本当に助かっています(笑)。
進藤:土が乾いてると、そろそろお水をあげなきゃなと(笑)。ただオフィスを借りているだけであれば、そこまで自主的にやることはないと思うんです。flat5という空間を作り上げている一員として、自分も何か参加できたらという思いはありますね。
隈元:flat5の認知度を高めつつ、界隈的な繋がりを広げていく取り組みができればと考えています。気軽に立ち寄れる場所であったり、何か情報発信をする場所として、より多くの地域、多くの方々に活用してもらえたら嬉しいです。
後藤:個人的には、キッチンを真ん中に作ったことで求心性が生まれ、非常によかったと感じていて。この空間を活かして、「食」を通じて繋がりを生み出すような企画も行っていきたいですね。運営側で企画・実行するものもありますが、外部からの持ち込みイベントがあってもいいなと。そうやって色々な人が交わることで、場の可能性をより広げていきたいと思っています。
進藤:個人的に問題だと感じているのは、現代社会における組織の自由度の低さです。大半の方は企業に勤めていると思うのですが、時間や場所に縛られ苦しんでいるケースが多い。企業は従業員のことを第一に考え、働き方の選択肢を増やしていくことが急務だと思うんです。個人としては常にアンテナをはり、自分に合った働き方を模索する必要がありますね。ダブルワーク、リモートワーク、在宅勤務などをはじめ、“新しい働き方”の選択肢が1つでも多くなればいいなと。もちろん、自由度が高くなることと引き換えにリスクも発生しますが、1人ひとりがそのリスクを認識して各々の選択をしていくことが、これからの社会に必要ではないかと感じます。
後藤:弊社は、オフィス常勤ではなく在宅も活用しながらフレキシブルに仕事をしているメンバーが多くて。仕事の内容にもよりますが、場所を物理的に縛る必要ってないと思うんです。信頼関係が築けていて管理がちゃんとできるのであれば、メンバーにとって一番働きやすい環境を選択してもらうべき。その方が、いい仕事ができると思います。たとえば所属する組織も1つとは限らず、複数の名刺を持ってより個人の専門性を活かして仕事をしたり。そんな自由度の高い働き方が、世間一般に浸透していったらいいなと感じています。
隈元:経営者として、メンバーにとっての働きやすさの向上は常に考えています。このflat5を作って思うのは、社外の方たちと自然に会話できる空気感が、自分たちの働き方にとてもいい影響を与えているということ。この空間には新しい働き方を模索している人が沢山いて、刺激を受けることも多いです。弊社でも去年から、パラレルワークを受け入れるようになりました。「会社」とか「組織」という閉じられた世界から飛び出し、様々な人と交流をすることによって、新しい繋がりやビジネスが生まれる。flat5を通じて、こうした可能性に満ちた働き方を積極的に実践していけたら、と思います。
(photo:森田剛史/text:澤木香織)
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