
【塩野義製薬】人と人が向き合う「FACE」コンセプトのオフィス。コミュニケーション活性化を図る本社移転プロジェクトとは
「SHIONOGIは、常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬を提供する」を企業活動の目的として掲げ、医薬品の研究開発を通じて人々の健康と社会の発展に貢献してきた塩野義製薬株式会社。感染症治療薬を中心に事業を展開しながら、近年は新たな治療領域の開拓やグローバル事業の拡大にも力を入れています。
同社がオフィスをグラングリーン大阪へ移したのは、2025年11月。オフィス探しで最もこだわったのは、「社員同士のコミュニケーションを活性化させるワークプレイスを実現すること」でした。
塩野義製薬株式会社 グローバルHR戦略室の葛本さまに、新オフィスのコンセプトや移転の背景についてお話を伺いました。(記事公開日:2026/04/08)
事業の変革期を見据えた本社移転プロジェクト
── オフィス移転を検討されたきっかけを教えてください。
これまで当社は創薬型製薬企業として感染症治療薬を中心に事業を展開してきましたが、現在は2030年に向けた中期経営計画の真っただ中にあります。感染症以外の領域への事業拡大や、グローバルへの展開など、会社としても大きな変革期にあると思っています。
そうしたタイミングで、グローバル本社としての機能を強化する必要がありました。今まで4つに分散していた拠点を集約し、コミュニケーションを深め、弊社の成長につながる、グローバル本社としてふさわしい場所を探していました。
今回移転したグラングリーン大阪は、大阪最後の大規模再開発エリアであり、象徴的な場所でもあります。海外から来られる方にも会社の“顔”として見ていただける場所だと思い、この場所への移転を決めました。

塩野義製薬株式会社 グローバルHR戦略室 葛本様
── 移転プロジェクトは、いつ頃から社内で動き始めたのでしょうか?
移転を決めたのは2024年2月で、内装工事を開始したのが2025年2月です。そして2025年11月27日に新オフィスへ移転しました。
本社移転は単なるモノの引っ越しではなく、働き方も見直していく必要があるかなり大きなプロジェクトのため、他社の事例を聞くと発表から3〜5年かけて移転を進めるケースも多いようです。それと比べると、当社の今回のプロジェクトは発表から移転が約1年半と短期間だったため、かなりスピード感のある取り組みだったと思います。
今回の移転では、オフィスを新しくするだけではなく、社員同士のコミュニケーションを活性化し、組織としての強さを高めていくことも大きなテーマでした。

コンセプトは「FACE」──人と人が向き合うオフィス
── 新オフィスのコンセプトについて教えてください。
新オフィスのコンセプトは「FACE」です。
以前のオフィスは部署ごとに区切られたレイアウトになっていて、驚くほど静かな環境でした。集中して仕事をするには良い面もあったのですが、静かであるがゆえに部署を越えた気軽なコミュニケーションが取りづらい環境でもありました。
そこで新オフィスでは、人と人が自然に顔を合わせ、会話が生まれるような空間をつくりたいと考えました。そうした思いから掲げたコンセプトが「FACE」です。顔を合わせ、向き合うことで新しい価値が生まれる。そんなオフィスを目指しています。
その象徴的な仕掛けが、3フロアをつなぐ内階段です。それをビルの西側・東側にそれぞれ2つ入れました。高層ビルの場合、フロア間の移動はエレベーターのみになることが多いと思います。ただ、それだとフロアごとに分断されてしまって、なかなかコミュニケーションが生まれにくい面もあります。
そこで今回は3フロアを内階段でつなぎ、一つの空間として区切りをなくすことで、上下階を気軽に行き来できるようにしました。

また、その階段の周囲に「ワークコモンズ」というコミュニケーションスポットを設け、自然と人が集まり、会話が生まれやすい設計にしています。
── ワークコモンズは、どのような使われ方が多いのでしょうか?
ワークコモンズにはオフィスコンビニやコーヒーマシンを設置していて、コーヒーを入れている間に会話が生まれたり、ちょっと立ち止まって雑談をしたりと、気軽に交流が生まれる場所になっています。ペット型ロボットの「LOVOT」も置いているので、そこで会話が始まることもありますね。その他にも、業務をしている人、面談をしている人、ミーティングをしている人など、思い思いの使われ方をしています。
また、フロアを移動する途中でばったり会った人と、そのままワークコモンズのチェアに腰掛けて話をすることもよくあります。あえて人が集まる場所に置くことで、自然とコミュニケーションが生まれるようにしています。
ワークコモンズは全部で6か所あり、3フロアそれぞれに2か所ずつ設けています。それぞれのスペースには「ヨーロッパ」「ノースアメリカ」「アジア」「オセアニア」など、世界の地域名が付けられています。最近は「今日のミーティングはアフリカで!」といった声も聞こえてくるようになりました。
こうしたスペースを設けることで、部署や役職を超えて人が集まり、コミュニケーションが生まれるきっかけになっているのではないかと思っています。

ヨーロッパ

ノースアメリカ

アジア

オセアニア
── そのほかに特徴的なスペースがあれば教えてください。
「コネクトパーク」という、執務エリアとワークコモンズの間に位置する広場のようなスペースも特徴の一つです。イベントやミーティングなど、比較的大人数で集まる用途にも対応できるようになっています。可動式の椅子を使ってレイアウトを変えられるので、社内イベントや発表会でも活用されています。
社員の動線の中にあるので、自然とイベントなどが目に入り、「あの部署ってこういうこともやっているんだな」とコミュニケーションのきっかけになっています。
新オフィスでは社員同士のコミュニケーションを促すスペースだけでなく、働きやすさやオフィス運用を支える機能もバランスよく整えています。
ほかにも、オフィスに関するさまざまなサポートを行う「コンシェルジュルーム」や、役員やその来客対応を行う「VIPエリア」などがあります。

大人数で集まれる「コネクトパーク」

オフィスに関するさまざまなサポートを行う「コンシェルジュルーム」

役員の来客対応を想定した「VIPエリア」
“会議室”より“話せる場所”を増やす発想
── 会議室を減らしてカジュアルな席を増やしたとお伺いしました。その背景には、どのような考えがあったのでしょうか?
会議室の数を減らしたことは、今回のオフィス移転で特に大きなチャレンジでした。
移転前、旧本社だけで会議室が50室ほどあり、他社と比べると多いと言われていたのですが、それでも社内からは「会議室が足りない」との声が常にあがっていました。そこで改めて状況を分析してみたところ、社員が本当に求めていたのは会議室そのものではなく、「予約可能な打ち合わせができる場所」だったのではないか、という仮説が出てきました。
たとえば、明日や明後日に誰かと打ち合わせをしたいと思ったとき、旧本社の執務エリアは静かで話しづらかったため、会議室を予約するしかありませんでした。そのため、打ち合わせの内容が機密性の高いものかどうかに関係なく、基本的に会議室を使う前提になっていたんです。
そこで新オフィスでは、会議室の使用を本当に機密性の高い打ち合わせや人事関連の話などに用途を絞り、それ以外の打ち合わせはオープンスペースでもおこなう考え方に変えました。その代わりに、ソファ席やファミレス席のようなオープンなミーティングスペースを大幅に増やしました。
── 会議室を増やす企業が多い中、思い切った決断ですね。
そうですね。新本社の説明会で「会議室の数は半分になります」と伝えたときは、正直かなり反響がありましたし、心配の声も多く出ました。それでも、会議室を増やすのではなく、話せる場所を増やす方向で進めることにしました。結果として、会議室は50室から25室に減っていますが、その代わりにオープンスペースで打ち合わせができる場所は100か所以上あります。
実際に新オフィスで働き始めてみると、大きな混乱は起きていません。むしろ「話をする場所がない」状況は以前より減っているように感じます。
振り返ってみると、社員が必要としていたのは会議室そのものではなく、「気軽に話せる場所」だったのだと思います。その仮説は、ある程度正しかったのではないかと感じています。


出社するからこそ生まれる、偶然のコミュニケーション
── 新オフィスに移転して、働き方にはどんな変化がありましたか?
まだ移転してからそれほど時間は経っていませんが、出社率の面でもコミュニケーションの面でも、今のところは狙っていた方向に近い変化が見えてきていると感じています。
現在当社では、月の半分は出社するルールを設けています。リモートワークの柔軟性は活かしながらも、人と人が直接顔を合わせることで生まれる価値を大切にしたいと考えているためです。
また、新オフィスでは 「Beacapp HERE」 という位置情報サービスを導入しています。弊社はフリーデスクなのですが、これは社員がどのフロアにいるのかを把握できる仕組みで、「あの人は24階にいるな、ちょっと会いに行こう」といった形で、直接会いに行くコミュニケーションも増えました。
こうした小さなコミュニケーションの積み重ねが、チームや組織としてのつながりを強くしていくのではないかと感じています。

全席モニターが設置された執務室

執務室からの眺望
── 移転後、社外の方からの反響はありますか?
来社いただくお客さまからは、「今必要とされているものが、全部揃っているオフィスですね」との声をよくいただきます。
執務席では全席にモニターを設置していますし、コーヒーマシンやオフィスコンビニ、シャワールーム、リラクゼーションスペースもあります。設備面だけでなく、景色の良さや居心地の良さも含めて、社員が出社したいと思い、気持ちよく働ける環境になっているのではないかと思っています。
── 最後に、オフィスについての今後の展望を教えてください。
このオフィスは、完成形だとは思っていません。むしろ、ここから社員みんなでより良いオフィスにしていくスタート地点だと考えています。運用しながら改善を重ねて、グローバル本社としてより良いワークプレイスにしていきたいですね。

(text:福家 実咲/photo:塩野義製薬株式会社様ご提供)

塩野義製薬株式会社
会社HP https://www.shionogi.com/jp/ja/
入居物件 グラングリーン大阪南館 パークタワー
所在地 大阪府大阪市北区大深町5-54
移転時期 2025年11月
移転規模 約3,700坪
利用人数 約1,000名










